前回は屋根( 秀和レジデンスvol.2 ー屋根の色は青?ー )前々回は壁( 秀和レジデンスvol.1 ー壁を6つのタイプに分類するー )に迫りました。
今回は、秀和レジデンスの三大特徴のラスト「鉄製柵のバルコニー」をじっくり見て行こうと思います。
バリエーション豊富な鉄製の柵バルコニー
秀和レジデンスのバルコニーは、各階ごとに一列の地続きで、間を仕切り板で隔てているタイプと、個々の部屋で独立しているタイプの二つに、大きく分けられます。
ですが、これまでに紹介した壁や屋根同様、じっくり見ると一つ一つに違いがあり、とても面白いのです。
「横に一列」
バルコニーの底部が一列につながっていて、仕切り板で一部屋ごとに分割されているタイプ。
バルコニーの端は、鉄製の柵でぐるっと囲まれています。
秀和レジデンスのバルコニーの、半数以上がこのタイプです。
上記のとおり、横に一列のタイプの秀和はたくさんあるのですが、仕切り板の形や、柵の形状などで個性を発揮しています。
仕切り板の上部が少し削れていて、スキーのジャンプ台のような形になっています。
よく見ると、仕切り板の前面部分にはモルタルが塗られていません。
仕切り板にはモルタルが塗られておらずシンプルな形。メロンのような模様の、壁のコテ塗り模様が際立ちます。
「独立型」
鉄柵とバルコニー底部、両方とも直線で構成されていて、スタイリッシュな印象に。鉄柵の、少し飛び出ている部分がかわいい。
新坂町レジデンスとの大きな違いは、柵の上部と下部が湾曲しているところ。
柵の高さも真ん中へ行くほど低くなっていたり、バルコニーの下には棚受けのような支えがあったり、細かいところまで凝っています。
両側がモルタルをしっかりと塗られた壁で支えられています。壁があると、力強い印象に変わります。
「ソリ型」
横の壁がバルコニーの底部と一体型で、ソリのような形に見えます。底部のカーブのおかげで、柔らかさを感じます。
こちらも洗足レジデンスと同じ形ですが、人がやっと出られるかな?というくらいしか、幅がありません。
横側のルーフバルコニーにかかっている部分の壁が、手を上げているように見え、かわいらしいです。
こちらは、バルコニー部分にモルタルが塗られていません。そのため、すっきりして見えます。
上部に行くにつれて細くなるよう形作られていて、そこで個性を発揮しています。
「変わった色の柵」
鉄柵がきれいな青色です。個人的にこの深い青色の柵のバルコニーがとても好きで、見つけると嬉しくなってしまいます。
こちらは灰色の柵です。色が変わるだけで、落ち着いて見えます。
「変形型」
他では見られない、レアなバルコニー。
屋根がそのまま下まで降りてきているように見えます。
さらに、建物の形状がノコギリの刃のようにギザギザになっています。
隣の部屋との距離ができるため、プライバシーも保たれそうです。
凝った鉄柵の感じも珍しく、控えめなサイズの上品なバルコニー。
上層階のバルコニーが、変わった形です。
柵はシンプルに見えますが、よく見ると少し湾曲しています。こんな細かいところにも、こだわりが見えます。
バルコニーは、これまでに紹介した壁や屋根よりも、違いが分かりやすいかもしれません。
注目して見てみるとその違いがとても面白く、やっぱり秀和レジデンスは見どころが満載だなと気付かされます。
バルコニーの写真だけで、どこの秀和レジデンスか見分けられるようになったら、あなたも「秀和マニア」の世界の一員です!
次回からは、さらに細かいパーツに注目して行こうと思います。
by yoko kawanishi instagram.com/lilycats25
河西葉子。『いいビルの世界 東京ハンサムイースト』を共同執筆した「東京ビルさんぽ」のメンバー。古い建物、とくに秀和レジデンスをはじめとしたヴィンテージマンションが好き。サイケデリックでキュートなスイーツを制作するpsychedelic sweets spicaとしても活動中。
秀和レジデンス記事シリーズ
秀和レジデンスvol.1 〜 壁を6つのタイプに分類する〜
秀和レジデンスvol.2 〜屋根の色は青?〜
秀和レジデンスvol.3 〜バルコニーに注目〜