二人暮らし/40〜60㎡
南青山のヴィンテージマンションを購入しリノベーションされたO様ご夫妻。コロナ禍以降、お二人とも在宅勤務中心の生活となり、愛犬ムニちゃんが家族に加わる。さらには趣味の陶芸は個展を開くことになったり…。ライフスタイルを大きく変えながら日々を楽しんで過ごされています。設計を担当した齋藤と共にリノベの経緯やこだわりについて伺いました。
▷奥様が作ったなんとも楽しげな造形の鉢はグリーンとともに部屋全体に賑わいを加えています
ー植物がたくさんあって素敵ですね。
奥様:私が鉢を作っているので、それにあった植物を探して植えています。リノベの計画をしていた頃は楽しみでつくっていましたが、購入をしたいと声をかけていただいて、今は秋の個展に向けた準備をしています。最近は、平日はデスクワークで、土日はずっと粘土ですね。
ご主人:先日電気窯を買ってバルコニーに置いているんです。
奥様:大きな作品は別の場所で焼かせてもらっていますが、それ以外はおうちで焼くことができるように窯を買いました。外で作業をする時は日差しが強いので、畑仕事に使うようなつばの広い帽子をかぶって作業しています(笑)。
お仕事は在宅勤務がメインですか?
奥様:二人とも同じ会社に勤めているのですが、コロナ禍以降は在宅勤務がメインです。ただ、リノベの計画時から休日も家で仕事をすることが多かったので、一人分はリビングの壁面に作業スペースを設けてほしいとリクエストしていました。
ご主人:今は自宅用と会社から持ち帰ったものを合わせて、PCディスプレイが4つも並んでしまいました(笑)。
奥様:以前は、深夜タクシーで帰宅することも多く、3食ほぼ外食という毎日でした。それが今は朝6時に起きて仕事を始めるようになりましたし、夜も自宅で食事をつくり24時には眠くなるという健康的な暮らしをしています。
ご主人:朝型になったのはムニちゃんの影響も大きいですね。
奥様:ボストンテリアの「ムニちゃん」と言います。2020年9月にここへ引っ越して、ペットは年明けに迎えるつもりでしたが、かわいい子に出会ったので新年を待たずに飼い始めました。コロナ禍以前は家にあまりいなかったのですが、家や近所で過ごすことも増えました。
ご主人:青山の街を買い物しながらゆっくりとムニちゃんのお散歩もできますしね。引っ越してからは自転車を買ったので行動範囲も広がりました。
奥様:私は電動自転車を買いました。直充電式なのですが、ルンバ用に玄関にコンセントをつけてもらったおかげで、玄関土間まで運べばそのまま充電できます。
ご主人:僕は昔ながらのクロモリの自転車を買いました。この辺りは坂が多いので一緒に走っていると、電動自転車とは差をつけられてしまいますが(笑)。
奥様:西麻布、広尾、乃木坂…ムニちゃんをリュックに入れて代々木公園のドッグランに行くこともあります。
ー物件は青山エリアで探していたのですか?
ご主人:通勤の利便性を考えて、当時住んでいた千駄木、根津や文京区エリアを中心に探していました。
奥様:でも、文京区は建物と建物の距離が近くて、なんとなく圧迫感があったので、内見に行ってもがっかりすることも多かったんです。物件を見るのが大好きなので、毎日サイトをチェックしているうちに、Google Earthの太陽光機能を使って日照時間を変えて「ここは日当りが良くないな…。」と、内見に行かずに判断できるようになっていきました。そんな時に、この部屋を見つけて、道幅が狭い分低層住宅が多くて圧迫感がなくていいなと思いました。
ご主人:内見をしたら、部屋の間口も広くて日も良くあたり眺めも良い。日当たりの良さは私たちが最も大事にしていたことだったので、広さは希望よりも少し狭いけど、購入を決めました。
奥様:南青山にはこだわっていませんでしたが、住んでみると最新のデザインやモノが身近に感じられるし、仕事柄行きたい場所も近いので、今となってはここから引っ越せないかもと思うくらい気に入っています。
ー当初からリノベーションをしようとお考えでしたか?
奥様:そうですね、新築は一度も見に行きませんでした。
ご主人:結婚前から同棲をしていたので、家を購入すること自体は割と早くから考えていて、結婚を機に具体的に計画を進めて行きました。二人ともアートディレクターとしてデザインに関わっていることもあり、自分好みにつくるリノベーションをしてみたかったんです。
奥様:両親からは「まだ家を買うのは早いんじゃない?」とも言われていたのですが、きちんと考えていることを見せたかったので内見を一緒にすることもありました。
ーこのお部屋もご家族と一緒に内見を?
ご主人:私の母も物件を見るのが好きですし、ここを買おうと思うって話したら「見に行く!」と、岐阜から新幹線で駆けつけてくれました。
奥様:計画中は壁の少ないオープンな間取りを心配されていましたが、今はお互いの家族みんながこの家を気に入ってくれています。岐阜のお義母さんもよく遊びに来てくれるので、リビングにエアベッドを敷いて泊まってもらっています。
▷ソファやチェアの色がリビング全体のアクセントになっています。家具はIDEEで購入したものが多いそう
ーEcoDecoとの出会いは?
奥様:この物件が見つかって、急いでリノベーションを依頼する会社を探しました。いくつかの会社に相談に伺うと、制約があったり、進め方が思っていたのとは違っていたり、自分たちのやりたいことが実現できないような気がして…。更に探していたとき、雑誌で齋藤さんが設計を担当したグリーンのおうちを見て、EcoDecoさんに相談をしました。
ご主人:ホームページに事例が豊富に載っていたのでイメージが湧きやすかったです。
奥様:実は相談やヒアリングの際に、それまでに集めていたイメージ画像をベースに、自分たちで考えた理想のプランをお見せしたんです。
ご主人:部分でやりたいイメージはありましたが、全体ではそこまで固まっていたわけではなかったので、2フロア作るとか、広いロフトを作るとか、今思うとちょっと現実離れしたプランだった気がします(笑)。
齋藤:計画のスタートにワクワクしつつも、狭さをとても心配されていましたね。寝室とリビングをいかに仕切るかを課題として数パターンをご提案しました。それに対して「この案のこれ」「こっちの案のこれ」と、要素を組み合わせながらご返答をいただきました。
ご主人:そうですね。明るくて開放的というテーマなので、ご提案いただいたプランをベースにイメージを固めていきました。毎回打ち合わせがすごく楽しみでした。
齋藤:水廻りやキッチンの優先順位は低いと、スタートした計画でしたが、オープンで大胆なキッチンにもなりましたね。
奥様:自分たちでも模型を作ったり、パーティションを斜めにしたらこんな感じかな?と想像を膨らませたり、楽しかったです。
齋藤:パーティションを設けること自体は、もともと案の一つでした。そして、視線を外へ誘導することや、部屋の中で「広い」と「狭い」を合理的に配置する「斜めのライン」の提案に対して、両方を取り入れる判断をされました。
奥様:実際、暮らしていても広く感じますね。リビングにいてもパーティションで寝室からの光もたっぷり入ります。バルコニー側の窓は薄いレースカーテンを2枚重ねているだけなので、日中はリビングの電気をつけなくても家の中は充分明るいですし、すごく気持ちが良いです。
齋藤:レースカーテンの面が多いので、室内に柔らかいく明かりが拡散していますね。
ークリエイティブなお仕事だと一人の時間が必要ではありませんか?
奥様:集中したい時は会社で作業をしますが、お互いにそれほどストイックなタイプではないので問題はないです。意見を求めることも多いですし。同棲していた賃貸マンションもワンルームで、一人になる個室はありませんでしたが、思い出してもお互いにストレスも感じたことはありません。
ご主人:大学も同じで、職場も隣り合って仕事をしていた時期もあるので、今の在宅ワークと環境はほとんど変わりません。だからこそ、家を買うことやリノベの方向性で揉めることもなかったですし、オープンなこの間取りもなるべくしてなった空間なのかなと。
奥様:もし子どもが生まれたら扉は閉められた方がいいかもしれないと思い、パーティションに扉をつけてもらいました。でも、このパーティションの設置は大変でしたよね!
▷寝室と居室を区切るパーティションはカーテンを閉めるとよりプライベートな空間になります。
齋藤:通常、可動部と固定部は同じ材の厚みでつくるので、接する部分は太く見える。その見え方を揃えたいということ、更にフレームをできる限り細くしたい!とのご要望がありました。「それは大変だな」と思いながら、そんなスッとしたフレームはどのようになるだろうと思い、挑戦しましたね。細すぎて作り替える箇所もありましたが、この住まいを象徴するものとなったと思います。アールはお二人らしいニュアンスですね。
ご主人:フレームの厚みを均一にするために、カーブのRを細くしながらつなげてもらったおかげで、とても綺麗に仕上がって満足しています。リモート会議の時、ちょうど背景にパーテーションが映り込むのですが、自信をもって見せられます(笑)。
齋藤:端部にいく程厚みを薄くするなんてできるのかな。と思いましたが、鉄屋さんが頑張ってくれました。
ー家づくりのイメージも一致していたんですね。
ご主人:こだわりたいところが意外と違ったり、譲れるところは自然と譲ったりして、家のプランではまったく喧嘩することはなかったのですが、事務手続きはお互いに苦手なので何度も喧嘩しました(笑)。
齋藤:物件購入時のローン組みもご自身でされていましたよね。
ご主人:一番金利が低くて私たちの条件に合っていたのでネットローンを選びましたが、それほど知識があるわけではなかったので進めるのは大変でした。
奥様:押し付け合いだったよね(笑)。でも、家を持つこと自体はやりたかったことなので、なるべくポジティブに進めよう!と。ローンを組むこと自体が初めてだったので、メールで届くチェック項目に沿って進めているうちに、なんとかなりましたね。
▷トイレの天井に設けたFIX窓が寝室側からの光を取り込み、空間にニュアンスを与えます
▷ランドリースペースはトイレ、脱衣スペースを兼ねています
ー同世代でリノベしている方はいらっしゃいますか?
奥様:実際にリノベをしている人はまだ少ないですが、未婚・既婚を問わずマンションを買っている人は多いですね。投資目的の人もいるみたいです。私たちも、彼らに「家賃を払うのは無駄だと思うよ」という話を聞いているうちに感化されて、リノベを決めた部分はあるかもしれません。周りを見ていると、流山や鎌倉など、都心から離れたエリアに買う子も増えているなと感じます。
齋藤:EcoDecoで物件を購入を検討される若い年代の方は都心にこだわる方が多いかもしれません。
奥様:都心はやっぱりすごく便利ですね。同僚や友人も気軽に来られますし、ムニちゃんにも会いに来てくれました。
ご主人:僕たちの場合はここでよかったなと思います。
ー感度の高い街ではありますが、生活のしやすさはいかがですか?
奥様:たまに近所の高級スーパーを覗くのは、珍しい食材がたくさんあって楽しいのですが、やっぱり高いですね(笑)なので、普段の食品や日用品はネットスーパーで安く購入しています。お水など重いものも運んでもらえるので便利ですしね。
ご主人:ホームセンターも意外と近くにあるんですよ。
奥様:キッチン下の収納に容量があるので、常温の野菜やストック、食器もほとんど入りました。大きな食器棚が必要かなと思っていましたが、コンパクトな業務用のステンレスの棚を買い足すだけで収まっています。
ーキッチン、広いですよね。
ご主人:奥行きもあるのでゆったりしています。
▷梁から提がるドライのラベンダーは、長野で知人が開いているハーブ教室でつくったものだそう
奥様:解体後の墨出しの時に「もう少しキッチンの幅を広げますか?」と提案していただいて、少し大きく変更しました。おかげで二人で立っても余裕があります。ただ、当時は料理をすることの重要度は低くて、水栓やシンクなどこうしてよけばよかったなというところもあります。キッチンに対するこだわりがなくて、リーズナブルさで判断していました。
ご主人:今は満足していますが、もし次に家をつくることがあったらキッチンの設備にももう少しこだわりたいねと話をしています。
ーご入居からまもなく1年ですが、引っ越してから変えたものはありますか?
ご主人:インナーサッシを設置して、バルコニーにはウッドデッキを敷きました。もともとやりたかったことで、リビングも広がりを感じますね。休日にはデッキで食事をすることもありますよ。
齋藤:収納が足りないかもと心配されていましたが、生活してみていかがですか?
奥様:靴収納は廻りは天井まで収納を確保して、キッチンもクローゼットも収納をたっぷり作ったので、細かい家具や収納は増やさなくても大丈夫でしたし、意外と収納は沢山ありましたね。ただ、陶芸関係の物が大がかりになったのは、想定外でした(笑)。
ーリビングの照明は少ないのですね。
奥様:リビングにハーマンミラーのバブルランプをつけるかどうか?と今も迷っています。
ご主人:ここがまだスケルトンの状態だった時から、どのサイズのランプが合うかなって模型を作ってシミュレーションをしているのですが、まだ踏ん切りがついていません(笑)。
ー将来的には引っ越しもお考えですか?
奥様:今すぐどうこうというわけではありませんが、物件を探していた時から、なるべく資産価値が下がらず、売却もしやすい場所というのは意識していました。両親から「あんまり特殊な間取りにすると売れないと思うよ」との意見はいったん無視しましたが(笑)。ゆくゆくは引っ越すかもしれませんし、ここはこのままでまた別のところでリノベーションというのもあるかもしれません。
齋藤:陶芸のウエイトが増れば、アトリエスペースが必要かもしれませんね。
奥様:増えたらまた変わってくるでしょうね。将来的には、姉家族と両親と3世帯で家を建てようかという話もあったりはします。ただ、ここは今の仕事をしている間はとても便利なので、今すぐ別の場所へ移るというのはないと思いますね。
齋藤:ご主人の実家がある岐阜へ移住という選択肢もあるのですか?
ご主人:岐阜に私の祖母の家があるのでそこで作家活動をするのもいいね、という話も出ています。
奥様:家を買ったことが足枷になることは全くないですね。それと、あまり損得勘定で考えないようにしています。結果的に損になることもあるかもしれないけど、やりたいことをやってよかったなと思えるようでありたいですね。
就職、結婚を機に20代にして家の購入を進められたというO様ご夫妻。スピード感のあるライフサイクルの裏には、仲の良さはもちろん、お二人の柔軟な考え方や何ごとも楽しむマインドがあるのだなと感じました。奥様が作られた花器や親子の共作であるドアノブなど、どこにもない“唯一無二”なものに囲まれた家そのものもまた、お二人のお人柄を反映しているようで、明るく大らかな空気に満ちていました。
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南側に大きな窓とバルコニーがある56㎡の住戸で、お二人+ムニの住まい。
計画では「開放的で気持の良さ」と共に「実生活のしやすさ(収納など)」を心掛けました。基本的にはオープンな形式ですが、完全なワンルームでもなく、それぞれの場所から視線が抜けることで面積以上の広さを感じることができます。そして、キッチンや収納建具、パーティションなどスケール感を上げることで、住宅らしさから離れた空間となったと思います。
振返ると、お二人の感覚が随所に散りばめられており、繊細と大胆など一つの方向性ではない要素をうまくバランスをとりながら独自の住まいとなっていったことを思い出します。
朗らかなお二人は柔軟な感覚で生活を楽しみ、これからも工夫しながらこの家を住みこなしていかれるのだろうと思います。
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