二人暮らし/61〜70㎡
清澄白河のM様邸で、ひときわ目を惹くのはほぼ壁一面を占める大きな棚。本棚としてはもちろんキャットウォーク、ドレッサー、ワークスペースなど多様に使える楽しみが詰まったスペースです。引っ越して約1年半。設計時は猫2匹と奥様だけの暮らしでしたが、その後ご結婚され、3匹目の猫が加わりいっそう賑やかに。川を望む明るく開放的なリビングでお話を伺いました。
—— 本棚がすごく素敵ですね。オシャレという言葉には収まらない、なんだかおおらかな雰囲気があります。
奥様:旅先で気に入った布や置き物を見つけても、賃貸マンションだと飾る場所がなくてあきらめていたので、いろいろなモノを置ける棚をリクエストしました。本もたくさん並べていますが、お気に入りの作家さんの作品やアートバーで作った自分の作品、祖母にもらった古いお香入れ、会社でもらった木彫り風の熊の置き物など、気に入ったモノをなんでもここに置いています。友達から「引っ越し祝いは何がいい?」と聞かれた時は「なんか棚に置く変なモノをちょうだい」とリクエストしました(笑)。そうしたら先日「そこまで変じゃないんだけど……」と、タイ土産のカップセットをプレゼントしてくれたので、それも並べています。
▷ずっと好きだったアーティストの作品も自作のたらしこみアートも垣根なく飾られているのがとても素敵です
—— そのプレゼント選びはセンスを問われますね(笑)。まったくジャンルの違うモノが置いてあってもうまく溶け込んでいるのがおもしろいです。
奥様:100均のカゴもあれば、深川七福神のお札も置いてありますからね。
齋藤:壁一面、このスケール感の棚はあまりないと思いますよ。
奥様:じゃあもっと本を増やすしかない(笑)。すぐに全巻セットを大人買いしちゃうんです。ただ、コミックスなら手前と奥とで2列並べられるので、まだ倍の数は入るかな、と。
▷廊下に吊るした小さな照明はヤフオクで落札。ガラスのお皿をリメイクしてあるそう
▷SANSUIの真空管アンプを搭載したステレオはご主人の愛用品。休日は音楽を聴きなら掃除するのが定番
—— 棚の前の通路に提げた小さな吊り照明もかわいいですね。
奥様:お皿をくり抜いた照明なんです。10年くらい前にヤフオクでアンティークを落札するのにはまっていて。その頃に買ってしまったままだったものを、設計時に「この照明を使いたい」を相談したら、齋藤さんから「じゃあ3つを並べるのはいかがですか?」とご提案いただきました。10年越しでやっと日の目を見ました。
齋藤:棚前の通路は長さがあるので、異なる照明を並べるのもおもしろいかなと思いました。
▷廊下からリビングの端までずっと続く棚は圧巻の迫力です
▷ウォークスルークローゼットにご自身でフックを取り付けて小物を収納しています
—— 棚自体も長くて広いですが、前に設けた通路も広いですね。
齋藤:棚から本を取り出したら、そのまま寝室の段差に腰掛けられるといいかなと。ただの通路にするのではなく、ここも居場所になることを目指しました。
ご主人:小さなスツールに腰掛けて、歯磨きをしたり、自由に使う場所ですよ。
奥様:朝はソファの端に座ってメイクをしています。以前はメイクのたびに道具一式を出していましたが、棚の一部をメイクスペースとして固定できたのは良かったです。
—— 窓から射し込む自然光でメイクをできるのは良さそうです。ウォークスルークローゼットもゆったりとしていますね。
奥様:在宅ワークの日はダイニングテーブルで仕事をすることが多いですが、気分を変えたい時は棚にPCを置いてオンライン会議をすることもあります。
齋藤:もっと幅を詰めることも可能でしたが、使いづらくならないように寧ろ広めにしました。
奥様:おかげでクローゼットの中で着替えもできます。帰宅して手を洗ったらクローゼットに移動して部屋着に着替えられる、という動線は便利です。
齋藤:クローゼットの通路は65cmをミニマムとしていますが、それだと着替えはしづらかったと思います。
—— 物件はご自身で探されたんですよね。
奥様:はい、子供の頃から不動産のチラシを見るのが好きでした。毎週金曜になると、ポストにたくさんチラシが入っていて。そこにベッドとかテーブルを書き込んでよく遊んでいました。大人になっても、内見をして「自分だったらここはこうする」と想像するのが好きで。一方で、家具も好きなのですが、賃貸だと間取りと家具のバランスが引っ越すたびに変わるので、なかなか思い切って買えなかったのが不満でした。それで「広い部屋を買ってソファを買おう!」と家探しを始めました。
—— ソファは買えましたか?
奥様:色々考えたけど、ソファはHAYにしました。ほかにもほとんどの家具を新調しました。
ご主人:家電もほぼ全部買ったよね。家電量販店の1階から順に上がりながら買いました(笑)。
▷カーテンはあえて窓の高さに揃えず天井近くに設置。天井の高さが引き立ちます
奥様:「何年使っているの?」っていう家電ばかりだったんですよ。大学生になって一人暮らしを始めるタイミングで中古で購入した電子レンジとか、祖父から譲り受けた冷蔵庫とか。だから、引っ越ししたら全部買い替えようと決めていました。
—— 以前のお住まいも清澄白河だったのですよね。
奥様:そうですね。住みやすくて気に入っていました。物件情報を見ていてもなかなか良い物件がなかったのに、2019年頃に突然たくさん出てきて。このマンションも一気に3部屋でていました。
齋藤:清澄白河を希望する方は多いけど、物件自体があまり出なくて競争率も高いので、タイミングも大切ですね。
奥様:この部屋は他の部屋に比べると少し高かったのでずっと空いていたのですが、何度か見に行くうちに売主さんが「あなたに住んでほしいから安くするよ」と言ってくれたのでラッキーでした。
▷バルコニーが柵になっており視線の低い猫たちも外の景色がよく見えることも、物件の決め手のひとつでした
—— EcoDecoに相談に来てくださったきっかけは?
奥様:もともとマンションを買いたいというよりは、家具が欲しい、リノベーションをしたいという気持ちのほうが先だったので、いろいろなリノベーション会社さんのwebサイトを見ている中で、好きな事例が多かったEcoDecoさんにご相談しました。
齋藤:検見川浜や目黒の事例のような雰囲気がよかったとおっしゃっていたのを覚えています。
楽しみのベース|リノベーション事例
二人暮らし/81㎡以上、この家に出会うまでの間、新築戸建やマンション、注文住宅…様々な住まいの形を模索し、「中古マンションでリノベ」を選んだI様ご夫妻。お住まいになって1年で「ようやくベースができたような感じ」と仰る暮らしづくりの過程と今、そしてこれからを伺いました。
小さな喜びや楽しみが日常にある贅沢|リノベーション事例
一人暮らし/40~60㎡、マンション購入が自分ごとではなかったE様が「いつかじゃなくて今でも買えるのかも」と思い、リノベーションに至った経緯や、その後の暮らしの様子を伺いました。
奥様:彩度の高すぎない感じが好きだったのかなあ。グレーカラーの猫が来てからグレーが好きになったのもあって、そういう色のテイストをリクエストしました。
齋藤:色数を減らすといっても、ストイックな方向性ではなくてもっとのんびりしているイメージだった気がします。好きなモノをいろいろと置きたいともおっしゃっていましたよね。
奥様:ジブリ映画を見ているといつも「家がいいなあ」って思っていたんです。たとえば『魔女の宅急便』のキキの部屋やお母さんの実験室とか、『となりのトトロ』のサツキのお父さんの研究部屋とか。本がバーっとたくさん並んでいて「なんか汚そうでいいなあ、住みたいなあ」って(笑)。
齋藤:ジブリの実家というニュアンスはおもしろいなと思いました。他にも「友達が来たら眠くなる」「その辺に猫が落ちている」といったキーワードも印象に残っていて。きっと整然とピシッと並んでいるのではなくて、いろいろなモノがあって、猫も人間もみんなが“ついのんびりしてしまう”といったイメージなのかなと受け取りました。以前のご自宅に伺った時に私ものんびりしてしまいましたし(笑)。
—— 寝室が家の中心にあるのもとてもユニークです。
奥様:一人で考えているとシンプルな間取りしか思いつかなかったんです。友達の家も真ん中に廊下があってその奥にLDKという間取りがほとんどですし。だから、齋藤さんから真ん中にキッチンのあるプランを見せてもらった当初は、あまり使い勝手がイメージできなくて。真ん中に廊下のあるような、普通の部屋の方が住みやすいかなと思っていました。でも、よくよく考えてみるとこのプランの方がワクワクするなと。せっかくワクワクするプランを出していただいたのだから、これにしよう!と決めました。
齋藤:朝起きたらすぐ窓を開ける習慣があるとのことだったので、ベッドが窓に面するように、キッチンと寝室を入れ替えて現在のプランになりましたね。
奥様:やっぱり寝室は窓が近くにある方がいいなと思って。
▷廊下と玄関を区切るガラスの扉を閉めれば完全に個室になります。猫に邪魔されずにリモート会議ができて便利だそう
▷玄関の横に設けた使い方を限定しない自由なスペース。背面もきれいに見せられる靴箱が市販ではなかなかなく造作しました
—— 玄関入ってすぐに個室というのも特徴的ですよね。
齋藤:完全に土間にするのではなくて、人が泊まったりもできるようなスペースにしようというお話でしたよね。カーテンで仕切ることもできます。
奥様:そうですね。母から「泊まれる部屋を作って」とリクエストされていたこともあって、完全な土間にはしませんでした。扉を閉めて個室にできるので、猫に邪魔されずにオンラインミーティングもできるので便利です。
—— お母さまはもう遊びにいらっしゃいましたか?
奥様:姪と一緒に来てくれました。姪はまだ幼いのですが、玄関の個室とリビングの間の扉を開けながら「ここを開けたら別の世界、私はお姫様よ」なんて言いながら、家の中をぐるぐる回って遊んでいました。
—— かわいいですね。回遊性のある部屋だと小さいお子さんはよく走り回って遊んでいると伺います。
奥様:猫たちも家全体だったり、寝室とリビングの間の壁の周りだったりを走り回っていますね。
齋藤:なんだか動物としての本能がそうさせるのかもしれませんね(笑)。
▷こんなにも堂々とカメラ目線でモデルを務めてくれた猫は、おそらくEcoDecoの撮影史上初!
—— リビングの床はボロンですよね。フローリングにはない独特の柔らかい雰囲気があります。
齋藤:「グレーの床」「猫の胃液のシミ対策」でフローリングではなくボロンをご提案しました。
奥様:シミができてもその部分を削ってオイルを塗ればいいとは教わったのですが、面倒そうできっと私はやらないだろうなと(笑)。事前にボロンのサンプルを試してみたら、拭き掃除が楽で気に入りました。家具を木にしたかったので部屋全体の色のバランスも良さそうかなと採用しました。
齋藤:木部も全体的にグレイトーンに染色して、バランスを取りました。
EcoDeco天井:私の自宅もボロンですが、私がリノベをした当時はこういうニュアンスカラーはまだなかったです。
齋藤:白と茶も編みこまれているから、家全体の色みに近いんですよね。
奥様:畳のような感覚もあって優しいし、床暖房を組み合わせられたことも気に入っています。
▷キッチンからウォークスルークローゼット、さらに玄関へとつながります。
—— キッチンはお2人で立つこともありますか?
奥様:主に彼が作ってくれます。設計の時点ではまだ一緒に暮らしていなかったので食洗機を付けたのですが、彼は手洗いをしてくれるので、今となっては食洗機じゃなくて収納にしたほうがよかったかなって。リノベした中で唯一後悔している部分かもしれません。
ご主人:僕は飲食店勤務なので洗い物はまったく苦じゃないんですよ。
—— であれば、IHじゃなくてガスコンロのほうがよかった?
ご主人:その可能性もありますが、猫の安全面を考えるとIHコンロでよかったです。
奥様:ガスコンロもロックはできますが、手をかけるとカチカチカチって音が鳴りますよね。賃貸でガスコンロから音がするたびに不安に感じていたのでIHにしたのはよかったです。
齋藤:ステップや棚板といった猫が楽しめる要素もあるけど、一方で収納に扉を設けて誤飲を防ぐことや、柵を設けて逃げないようにするといった猫が安全に暮らせる配慮を特に大切にされていた気がします。
奥様:猫のための工夫がメインの家はあんまり好きじゃないので。専用のキャットウォークを設けるんじゃなくて棚の段差を利用して遊べるような、私たちも猫も自然と居心地よく過ごせるといいなと思っていました。
—— 窓に設けた建具もかわいいですが、猫のためのモノですか?
▷彩度の高すぎない感じが好きとのこと。さまざまなモノがあるのにゴチャゴチャしないのは、カラーリングの効果も大きいかもしれません
奥様:はい。猫が窓から外を見るのが大好きなので、間違って出ていかないようにつけてもらいました。猫用のこういった柵って縦のモノが多いんですが、横がいいなと思って。
天井:これがあると雰囲気が全然違いますね。効果的だと思います。
▷ここに越して以来ぐんぐん成長しているというエバーフレッシュ。猫草代わりにもなっています
—— そういえば壁にはあまり何も飾っていないんですね。
奥様:大きな風景写真をリビングに飾りたいなとは思っているので、いい出会いがあればほしいですね。
齋藤:広々としているから、写真でも絵でも大きな作品を飾れるのがいいですよね。
奥様:友達の家で天井からいろいろなモノを吊って飾っているのを見て、それを真似したいなとも思っています。
ご主人:エバーフレッシュの成長が早いので上の部分は引っ掛けて吊っています。
—— 棚もたっぷりと余裕があるし、まだまだいろいろと楽しめそうですね。
奥様:必要なモノはもうあるので、今後は必要じゃないものをもっと増やしていきたいなと思います(笑)。
本棚は、その人の趣味嗜好だけでなく、人柄さえも色濃く反映されるスペースですが、M様の棚は特に強くそれを感じました。お気に入りの本や漫画、アート作品から民芸品、外国の不思議なお土産、100均グッズまで。多種多様なモノが雑多に見えつつも絶妙なバランスで並んでいるのはT様のセンスの良さの賜物。明るくおおらかなご夫婦の人柄もそのままで本当に魅力に溢れていました。この部屋にいると、ご夫婦はもちろん、猫も訪れるご家族や友人たちもみんながリラックスしているというのも納得な、温かい空気に包まれたお住まいでした。
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