二人暮らし/81㎡以上
利便性抜群の日本橋のマンションから、賃貸に出していた千葉市のマンションに戻る為に、フルリノベされたH様ご夫妻。家の主役は奥様たってのご希望で造作した美しい佇まいの本棚!リノベのポイントを伺うとともに住環境の変化に伴って変わったという暮らしや価値観についてご夫妻にお話を伺いました。
―両側に本棚を置くのは奥様のアイデアですか?
奥様:はい。もともと本棚が好きで、自分で眺めるために本棚の写真だけで2,000枚くらいPinterestなどに集めていました。ついに、その写真が役に立つ時がやってきたぞ!と(笑)。言葉だけではうまく伝わるかどうかわからなかったので、初回の岡野さんとの打ち合わせ時にそれらの写真も使った自作のムードボードをお渡ししました。
―拝見しました、イメージとコメントが丁寧に書かれていて熱量が伝わってきました。
奥様:「この本棚の上部はいいけど、下段はNG」「グリッドはこんな感じで揃えたい」「色や素材は持っている家具に合わせてこんな感じがいい」など写真にコメントを添えて。本棚だけで10ページくらいあった気がします。そうしたら、今とほとんど変わらないプランが上がってきたので、さすがでしたね。
ご主人:本のサイズに合わせて高さや段数を調整したくらいだったと思います。
―よく見ると本棚は左右対称ではないのですね。
奥様:テレビを置いてある本棚は、テレビの位置やソファやダイニングの高さのバランスを考慮して、少し高さを下げた5段にしています。
ご主人:代わりにダイニング側の本棚は背の高い本を入れられるよう4段にしています。
奥様:ダイニング側はアート、児童書、絵本、インテリア、旅関連の本が多いですね。テレビボード側はどちらかというと仕事にまつわる本が多いです。下段は埃がたまりやすいので扉をつけてもらいました。雑誌類はそこに収納しています。
―ご主人の本も入っているのですか。
ご主人:私が趣味でよく買うアート関連の本は入っていますが、仕事に関する本や他のジャンルの本は私の部屋に置いています。
奥様:ビジュアル的に素敵な本はこちらにいただくって感じで(笑)。以前は本棚に収まりきらず、どんどん積み上げていて必要な時にすぐには見つからないという状態だったので、この本棚になって実用性も格段に高くなりました。
―グラシン紙で本を巻くのはナイスアイデアですね。
▷棚ごとにテーマ分けされている本棚。香水(Whisper in the libraly )までテーマに沿っているのがさすがです
ご主人:神田の古本屋さんもこんな感じですよね。日焼けや埃、ニオイから守ることができるようです。
奥様:本来の役割はそうなのですが、色のトーンを和らげたいというのもありました。リビングにこれだけの本を置くといろいろな色や書体が目に飛び込んできてうるさくなってしまうところを、少しグレイッシュなトーンに落ち着かせることができました。
―いろいろなメリットがあるのですね。ただ、この数は大仕事だったのでは…?
奥様:ものすごい量のグラシン紙を買いました(笑)。リノベを始めた頃から日課にして、パッキングしながら内職のようにコツコツと巻いて。半年ぐらいかかりました。紙って経年変化でベトついたり、くっついたりすることもありますよね。それも防げて手触りもサラサラしていて心地良いです。
―奥様がムードボードを作られたとのこと、リノベは奥様主導だったのですか。
ご主人:デザインの部分は妻の担当で、私はどちらかというと裏側というか、機械や電気系統担当でした。ダクトやケーブルの配線は私がメインで進めていましたね。
―役割分担をされていたんですね。間取りは大幅に変えましたか?
▷デスクは本棚の最下段と高さを揃えました。ikususuの木製アームチェアも相性ぴったりです
奥様:いえ、以前住んでいた時に配置や動線に不便は感じていなかったのでレイアウトはほとんど変えていません。
ご主人:リビングの横にあった6畳間の和室を無くしてつなげたくらいかな。
奥様:そうだね。和室だったところに私のワークスペースを設けました。天板を本棚の棚板の高さと揃えているので一体感があって気に入っています。
―デスクの下は引き出しじゃないのですね。
奥様:引き出しよりもトレイのほうが使い勝手がいいんですよ。たとえば進行中の業務に関するトレイは手前にしておけますし、気軽に入れ替えができます。
▷仕事用のデスクは引き出しではなくトレイにすることで簡単に入れ替えられます
▷玄関ドアを開けてまず目に飛び込んでくるのがこの美しい景色。扉付き収納には傘等を収納。ニッチの飾り棚が空間を彩ります
▷玄関を下足収納まで広げたことで廊下が短縮し、使い勝手がよくなったそう
―以前こちらにお住まいで、一時期、別の場所にお住まいだったのですよね。
ご主人:はい、私が独身時代に購入して結婚後3年間一緒に住んでいました。ただ、当時の妻は激務で、ここから都心に通勤するのは大変だったので、2014年に日本橋の賃貸マンションに引っ越しました。私は職場がこのマンションから徒歩圏内で、都心から通っても通勤ラッシュとは反対方向でさほど負担ではありませんでした。
奥様:日本橋には7年住んでいました。ここよりもずっとコンパクトでしたが、築浅で利便性も高くて、それはそれでよかったですよ。ところが、コロナ禍以降、世の中が変化して深夜まで働くようなワークスタイルではなくなったことや、私自身もサラリーマンからフリーランスになったこともあり、東京の中心にいる必要性が薄くなってきたんです。それで「じゃあ、あのマンションに戻ろうか」という話が出てきました。
―日本橋にお住まいの間も、ここは手放してはいなかったのですね。
ご主人:はい、会社の後輩に貸していました。「そろそろ帰ろうと考えている」と話したら、彼らもすっかりこのマンションを気に入っていたようで、すぐにこのマンション内での空き部屋を探し始めて。そうしたら、別の棟にたまたま空き部屋が出て、当初想定していたよりも彼らが早く引っ越せることになったんです。
奥様:彼らとは2023年3月末までの賃貸契約だったので、私たちのリノベはそこからスタートする予定でしたが、早いに越したことはないので、それなら急いで進めようと、岡野さんに連絡しました。おかげで予定よりもかなり早く進んで2022年の年末にはここに引っ越してこられました。
―引っ越してちょうど半年ですね。新しい暮らしはいかがですか。
奥様:基本的には家で仕事をしていますが、外出した日も「早く家に帰りたい」「家にいたい」という気持ちが強くなりました。天気が良い日は午後から夕方にかけて良い光がリビングに差し込んできて気持ち良いです。
ご主人:冬はベランダの外に広がる樹々の葉が落ちて向こうの方まで見渡せます。窓から夕陽が落ちていく様子をずっと見ながら過ごしていますね。
奥様:ソファに掛けて「今日も1日が暮れていくなぁ」とのんびり夕陽を眺めていると、すごく豊かな気持ちになります。
ご主人:私も今は徒歩で会社に行っているのでほとんど通勤時間がかかりません。「今から帰るよ」と連絡して、13分後には家にいます(笑)。「家に帰ったら今日はこれをやろう、あれをやろう」と考えるのが楽しいですね。
―通勤時間が減れば、そのぶん自由な時間が増えますよね。
▷以前の住まいから愛用しているアイラーセンのソファ。引っ越し時にファブリックを張り替えました
奥様:夜の過ごし方が大きく変わりました。サラリーマンだった頃は、往復3時間かけて通勤していたので帰宅すると、もうぐったり。ゆっくりと本を読みたくてもすぐに寝落ちしてしまう毎日でした。それが今では早い日ですと20時頃からベッドに入って本を読む余裕ができました。寝るのも早くなりましたね。
ご主人:私は自分の部屋でギターを弾いたり、音楽を聴いたりすることが多いです。
▷ご主人の趣味部屋。好きなことを自由に楽しんでいらっしゃる姿が目に浮かびます
−ギター、ダーツ、フィギュア……ご主人の部屋はまさに「趣味部屋」ですね。
奥様:大変気に入ってらっしゃいます(笑)。
ご主人:やりたいことはここにすべて揃っているので毎晩ここで過ごしていますね。
―クローゼットの中にもギターがたくさんありますね。
▷ダーツ、ギターと多趣味なご主人。クローゼットの扉は既存利用
▷玄関側から見た室内。手前右が玄関収納、ご主人の部屋へと続きます
奥様:ギターをクローゼットに収納できるよう天井の高さを出してもらいました。
ご主人:レイアウトやデザイン的にはあまり変化のない部屋ですが、結露しやすかったので二重サッシに変えました。以前に住んでいた時も、ここと寝室は結露で壁紙にカビが生えてしまい、後輩に貸し出す際に壁紙交換したことがあったので、結露対策だけはしたくて。
奥様:二重サッシにしたおかげで冬もほとんど暖房いらずでした。防音にもなるので付けてよかったです。
―一度住んでいたからこそ分かることですね。
ご主人:それで言うと、リビングの床暖房も切ってもらいました。リビングは西日が入るおかげで夜まで温かくて、以前住んでいた時に一度も使ったことがなかったので。
奥様:今もフローリングの下に残ってはいるんですが、操作パネルも取り外してもらいました。
▷エアコンの左横の飛び出たスペースは玄関側のニッチスペース。間仕切位置変更によってエアコン配管の処理にも工夫がされています
―寝室はカーペットを敷き込んでいるのですね。
奥様:当初は廊下と同じフローリングで考えていたのを、減額のためにカーペットにしました。ただ、寝室の床ってほとんどベッドで見えませんし、朝起きた時に足元が冷やっとせず柔らかいので、結果的にはカーペットにしてよかったです。高齢になった時に万が一ベッドから転げ落ちてしまっても安心ですしね。
―歩行音も静かで就寝前にも良さそうです。
奥様:そうですね。あと、壁紙も他とは違ってグレーにしていただきました。寝室に白だと明るすぎるかなと思って落ち着いた色を選びました。
―寝室のクローゼットはかなり大きいですね。
奥様:通常の引き戸を想定していましたが、岡野さんが1箇所に寄せられる扉を提案してくださいました。全開にできるので中が明るくなって非常に使いやすくなりました。
―端から端まで一覧できていいですね。洋服選びが楽しそうです。
奥様:クローゼットの中はあえて設えず、バーだけにしてタイヤ付きの衣装ケースを入れました。これなら入れ替えも簡単ですし、掃除も楽になりました。
ご主人:できる限り天井の高さも上げてもらったおかげで、いろいろと詰め込めるのも便利です。寝室の壁の向こう側が玄関のニッチになっています。ニッチを玄関のどこに設けるかは、私たちにはわからない構造的な問題もあって、岡野さんにいろいろなプラン提案をしていただいて感謝しています。
▷キッチンは背面の収納も含めPanasonicのシステムキッチンを採用。食洗機を入れなかったのは自分のライフスタイルを知っている大人ならでは
▷トイレの扉と廊下の扉が干渉しないよう廊下の扉を引き込み戸に変更しました
―EcoDecoに決めてくださったきっかけは?
奥様:たまたまウェブサイトを見つけたのがきっかけでした。事例を見ると都内の物件が多かったので、千葉市でも手がけてもらえるかをメールで問い合わせたら、すぐに岡野さんから「大丈夫です!」と返事をいただきました。私も夫もせっかちなところがあるので、その時点で好印象でしたね。
ご主人:施工を担当してくださった工務店さんもよかったです。
奥様:都内の物件の場合は相見積を取るとのことでしたが、私たちの場合は立地的に一択でした。でも、すごく穏やかな方たちでお願いできてよかったです。
ご主人:もちろん技術力もすごく高かったですし。
―他社と比較はされなかったのですか?
奥様:個人の設計士さん、大手のハウスメーカーさん、EcoDecoさんの3社に相談をしました。ただ、個人の設計士さんはその方の作家性が私たちの望むテイストとは少し違ったので、2社に絞って自作のオリエンシートをお渡しして、同じ条件でプランの提案をお願いしました。
―先ほどおっしゃっていた奥様が作られたムードボードですね。
奥様:ええ、ムードボードに込めた私たちの希望をいかに細やかに実現してくださるかという観点でプランを拝見しました。間取りもほとんど変えませんし、思ってもみないアイデアや提案はあまり求めていませんでした。岡野さんのプランは、プロでないとわからない問題を考慮した提案がたくさんあったんです。たとえば「廊下とトイレの扉が干渉してしまうので、廊下の扉は引き戸にしましょう」といったことを明確にわかりやすく説明してくださったり。
ご主人:ハウスメーカーさんも説明はしてくださるのですが、どうしても大勢のチームで動くプロジェクトになるので、一つ一つに時間がかかってしまうんですよね。その点、岡野さんはその場でスケッチを書いて説明してくださるので、スピードも全然違いました。
奥様:金額もそんなに大差がなかったので、それなら私たちは早いほうがストレスも少なくていいなということで、岡野さんにお願いしました。ただ、早いからといって突貫で進めている感じは全くなくて、私の素朴な疑問にも全部答えてくださいましたし、進捗状況もDropboxに画像を上げて共有していただきましたし、とても丁寧でした。
ご主人:施主支給品も「ここが安いですよ」とURLを送っていただいたので、探し回らずに済みました。マンションと私の職場が近いので、車で通勤がてら購入した施主支給品を持ち込んで、ついでに工事の様子を確認したこともありましたね。
奥様:リノベを進めていく中で不満に思うことは本当に一度もありませんでした。キャッチボールがスムーズで、主人も私も全面的に信頼して進めることができました。
▷奥様のコレクションである香水の棚。重さでしならないよう棚板はガラス製にしています
―将来的にも長く住み続ける予定ですか?
奥様:そうですね。私は仕事の都合で早朝から都内に出る日もあるので、引っ越す前は「余裕があれば都内に事務所が欲しいな」とも思っていましたが、その考えもなくなりました。そういう日はホテルに前泊すれば気楽ですし、いろいろなホテルに泊まるのも気分転換になっていいなと。
―そして、早く家に帰りたいと。
奥様:都心のマンションは便利でしたし、近くにおいしいレストランもたくさんあったし、それはそれで気に入っていたんですけどね。ただ、部屋に差し込む光は向かいのビルからの反射光くらいで、部屋から緑もほとんど見えませんでした。それが、だんだんと歳を重ねてきたからか、「緑っていいなあ」とか「ああ、お日さまが沈んでいくなあ」とか、ここで自然の移ろいを感じることのほうに価値を感じるようになって。心が穏やかになっていることを実感しています。東京の中心で生まれ育ったのに、価値観って変わるものですね。たとえ東京に出るのに時間がかかったとしても、こちらでの暮らしのほうがいいなと思うようになりました。
―なるほど。マンションの造り自体も中庭があってゆったりとしていますよね。
ご主人:中庭に木のテーブルと椅子があるんですよ。
奥様:天気のいい朝はそこで本を読んでいます。あまり誰も使っていないので静かなんです。子供用の図書室や来客用の宿泊室もあって施設は充実していますね。
ご主人:私の趣味部屋を防音室にするという案もありましたが、最近、マンション内に音楽室があることに気づいたので、大音量を出したい時はそこを借りています。防音室にしなくてよかったです。
―いいですね。今後はどんな暮らしのアップデートを考えていますか?
奥様:本棚にまだ余裕があるので本はまだまだ増えると思います。あと、もう少し落ち着いたら、保護猫を迎えたいねと話しています。(※後日談:取材後の6月末に子猫を迎えたそうです!)
―猫ちゃんの遊ぶスペースがたくさんありそうです。
奥様:本棚の上を歩いてくれたら嬉しいですね。日当たりもいいから昼寝もしやすいと思います。実は、廊下の扉は猫が覗けるようにガラスにしてあるんです。
―それは楽しみですね! 今日はありがとうございました。
▷バルコニーに向いた一人掛けソファは奥様のお気に入りスペース。窓際にはシーズン毎に本をディスプレイ。取材時は展覧会の開催時期だったため、アンリ・マティスコーナーに
お互いの趣味はそれぞれのペースで楽しみ、共通して好きなことは共に分かち合う。そんな程よい距離感が自然と生まれるH様の住まいは、年齢を重ねゆく大人だからこそ叶えられるリノベーションだなと感じました。たくさんの本に囲まれても賑やかになりすぎない工夫や、色数を抑えたカラーコーディネート、さりげなく飾られたアートや香水、花……全体としてはシンプルでいて随所に奥様のセンスが光り、とても素敵でした。
↓H様邸の画像をまとめてご覧になりたい方はこちらから(Pinterestのサイトへ移動します。)
H様邸のプロジェクトはインタビュー内にもある通り大きく間取りを変える内容ではありませんでした。それは様々なプランのバリエーションをご提示した後に元の間取りに似たプランに落ちついたのではなく、ご要望をヒアリングした時点でH様が求めていらっしゃるのが間取りのバリエーションではないと感じたからです。
H様作成のボードで骨子となる方向性は定めていらっしゃったので、私の役割は「かゆいところに手が届く設計」だったと思います。
ご希望のイメージを実現可能なプランとしてまとめたり、ちょっとした余白を見つけてスパイスとなりそうな要素を加えたり、ミクロな視点とマクロな視点でまとまりあるデザインとなるようにバランス良く調整したりと、設計打合せでH様と一緒に精度の高い計画に仕上げていったような感覚です。
一緒に作り上げた空間を細部まで丁寧に使いこなしていらっしゃるご様子が伺えてとても嬉しく思います。
不動産探しから施工まで、リノベーションに関するあらゆるご相談に、幅広くお答えします。リノベーションコーディネーターが無料個別相談会を行っていますので、お気軽にご予約下さい。まずは、じっくりとお話ししてみませんか。
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