ファミリー/71〜80㎡
新築で購入し約20年お住まいのマンションをフルリノベされたN様ご家族。お子さんが小学校に入学した頃から自宅リノベを考え始め、小学2年生になる2021年にリノベーションされました。日々の生活で感じていた小さなストレスや不便がほぼすべて解消され、奥様いわく「大満足!」。階段付きのロフトや、ご主人の趣味が詰まった壁面収納など遊び心溢れる要素もたくさんあり、どのようにアップデートをされたのか詳しく伺ってきました。
▷ロフトには梯子ではなく階段を設けました。娘さんのお友達が遊びに来た際は「マンションなのに階段がある!」と驚かれたそう
▷ダイニング側から見たロフトスペース。中は見えないけれど気配が感じられるほどよさです
―ロフトに階段があるのはいいですね!
奥様:EcoDecoさんのホームページで、階段付きロフトの事例を拝見したのがきっかけで連絡したので、ロフトはぜひやりたかったことの一つでした。連絡をした際に対応してくださったのがその事例を担当された齋藤さんだったんです。
55㎡で4人+愛犬暮らし すっきりコンパクトな自宅リノベ|リノベーション事例
新婚当初に中古マンションを購入した後、家族構成が大きく変わりご自宅をフルリノベーション。ロフトや小上がりなど空間をフルに使うことで55㎡に4人暮らしでも快適に暮らしています。
―それはご縁を感じますね。ロフトは娘さんのお部屋ですか?
奥様:はい、ロフトの下のスペースも含めて、ほぼ娘が使っています。以前はいわゆる普通のマンションの間取りでしたが、「子どもの頃におもしろい空間で過ごせたらきっと楽しいだろうな」という思いもあって、自宅のリノベーションを決めました。
齋藤:初めにいただいたメールに、子どものための楽しい空間をつくりたいと書いてあったのをよく覚えています。
―娘さん(小学4年生)はロフトができていかがですか?
娘さん:家が楽しくなりました!今はロフトが私の部屋になったのがうれしいです。
▷ロフトスペースの壁面はニュアンスのあるブルー。アクセント塗料はすべてFarrow&Ballのもの
―ロフトでどのように過ごすのが好きですか。
娘さん:本を読むのが好きなので、ロフトの上で壁を背もたれにしてアガサ・クリスティのポワロシリーズや、大好きなハリー・ポッターシリーズを読むのがお気に入りです。
―読書家ですね、ロフトの下は“図書館”になっているのですか?
娘さん:はい、趣味で集めている本を並べています。お母さんが選んでくれた潜水艦みたいな照明も気に入っています。
▷ロフトの下は娘さんの自作図書館。潜水艦のような照明も良い雰囲気でくつろげそうです
▷三方向に窓があり開放的なN様邸。西側の窓は調光と遮光のロールスクリーンの二重にして西日対策をしています
齋藤:このロフト下スペースはこもることもできるし、通り抜けることもできるのがNさんのアイデアでした。ロフトの向かいの学習スペースも落ち着いた居場所になっています。
娘さん:初めて自分のデスクを買ってもらいました。だけど、夜になるとちょっと怖いです…(笑)。
奥様:戸で閉め切っているわけではないのですが、今はまだ一人で過ごすのはちょっと不安みたいです。私がロフトの階段に座ったり、リビングのソファに座っていると気配を感じられて、安心して勉強できるようです。ロフトの天井にはカーテンレールをL字につけてあるので、もう少し成長したらカーテンを下げて半個室のようにもできます。
―お子さんの成長や心境の変化に合わせて独立性を持たせられそうです。
―新築から20年住まわれてのフルリノベとのこと。ロフト以外にも実現したかったことは?
奥様:有効活用できていない部分がたくさんあったので、それをなんとかしたくて。といっても、本当に些細なことです。たとえば、天井まで目一杯収納になっていないので無駄な空間があるとか、WICの中に不要な出っ張りがあるとか。20年経って水周りが古くなっていたので、一新したいという思いもありました。特に浴室は、主人が「入浴中に仕事のアイデアが浮かぶことがある」と言っていたので、大事に考えた場所のひとつです。
ご主人:お風呂は広くなりましたね。冬はベンチカウンターにお湯を流しながら座っていると温かくて心地いいです。
―年齢を重ねてからも安心して入浴できそうです。
奥様:フルリノベをしたことでこれからも住み続けるだろうということで、歳を重ねても暮らしやすいようベンチカウンター付きの浴室を選んだり、廊下やトイレに手摺の下地を設置しておくなどの配慮をしました。
▷イケアのワゴンの上段に炊飯器を設置。炊飯時は引き出して蒸気を逃すことができます。ナイスアイデア!
▷ガスコンロ横は、あえてタイルにせずマグネットパネルに。壁に下地を付けるよりも自由に着脱でき需要が広がりつつある仕様です
齋藤:キッチンは以前にも一度新しくされていましたよね。
奥様:はい、10年くらい前にカウンターキッチンをリフォームしたことがありました。ただ、キッチンの作業スペースを少しでも広くするために、奥行60cmのスリムタイプのキッチンにしたら、それがイマイチで…。奥行きが浅くなると、単純に作業スペースがコンパクトになるだけではなく、食洗機の種類も限られますし、作業台だけでなく下の収納も想像以上に狭くなるんですよね。
―今回壁付けキッチンにされたのはどうしてですか?
奥様:広さをとりたかったんです。齋藤さんからも「リビングの広さ優先であれば壁付けですよ」とアドバイスをいただきました。結果的にテレビとソファの距離も快適に保ちつつ、ロフトができても狭さを感じないので、壁付けにしてよかったです。食洗機の位置をシンクにかかるようにしてもらったのもお気に入りポイントです。シンクで予備洗いした食器をすぐに食洗機に入れられて、床に水滴が落ちづらいんです。そうした細かなリクエストを叶えられたのは造作だったからこそだと思います。
齋藤:計画の大きな方向として「生活の物を隠して見せない」か、「ある程度見せても良いか」かということがありますが、N様邸は後者ですよね。
奥様:全部しまい込んで何も見せない家はあまり好みではなくて。生活感がありつつもそこそこ整っているという雰囲気が好きなので、基本的には「見せる収納」の方向だと思います。とはいえ、あまりにも生活感が溢れすぎるのも避けたかったので、食器や調味料もすべて出さなくて済むようにキッチン収納の見せる部分と隠す部分のバランスなどは工夫しました。収納もたくさんありますが、「ここに入るだけ」とルールを決めて、今は増やさないようにしていますね。本、洋服、食器、子どもが幼い頃のおもちゃなどは譲ったり、手放したり、かなり処分しました。それから、躯体現しにはせず綺麗に見せたいというのもリクエストしたことの一つでした。キッチンの天井は、本当はリビングと同じように躯体に塗装する予定でしたが、解体してみたらスラブがきれいではなくて…。
齋藤:躯体表しに塗装をする場合もありますが、Nさんの場合は仕上がりの雰囲気を優先しましたね。
―奥様も設計に加わっていらしたと聞きました。
奥様:仕事でオフィスや商業施設の設計に携わっていたことがあって。でも、住宅はあまり設計したことがなかったので、知っているようで知らないことも多くて、齋藤さんにいろいろ教えていただきながらチームに加えてもらいました。
齋藤:具体的なアイデアをお持ちでしたので、それを実現するための調整という役割が多かったかもしれません。お施主様だけど設計メンバーであったと思います。
奥様:長く住んでいるからこそ感じる不便さや動線の悪さをどう解消するのが良いかは自分の中で思い描けていたので、それを齋藤さんが調整しながら形にしてくださいました。
齋藤:間取りだけではなく日差しや風の流れなども含めて、この家に対する理解が深いので、私の提案に対するご判断も明確だったと記憶しています。だから、とても緻密に練られた住まいだと思いますよ。
奥様:家全体の風通しがよくなるように動線を考えたり、窓の向きに応じてブラインドの付け方を変えたり。仮住まいの場所も近かったので、現場での打ち合わせにも参加させていただきました。おかげで後悔しているところはまったくないです!齋藤さんがなんとかしてくれた部分もたくさんありましたが、たとえできないことがあっても理由を聞けば納得できましたし。やりたいことは全部伝えて、妥協しないことは大事だなと感じました。
―家づくりは奥様主導だったのですか?
ご主人:家づくりはほとんど彼女の趣味なので口出し無用です(笑)。私のギターや機材の収納スペースを取ってくれればあとは任せるよ、と。
▷洗面器を半分埋め込みタイプにして正解だったという洗面台。水が飛び散りづらく使い勝手が良いそうです
▷脱衣室の入口付近にはタオル類の収納棚を造作しました
―完成されていかがでしたか?
ご主人:すごくいいですね。妻のやりたかったことに住んでから気づくことも多いです。設計中は、巾木をなくすことや、リビングとキッチンの間に何本か木を組み立てることを説明されても、正直よくわからなかったのですが(笑)、暮らし始めて「巾木がないとすっきりしていいな」「リビングとキッチンが区切られつつも広々としているな」と、その良さを実感できました。出張先のデザイナーズホテルで間接照明に照らされた洗面台を見た時は、まるで我が家の洗面台のようで「ああ、こういうのを目指していたのか!」と。
奥様:それはよかった(笑)。洗面台は特にこだわった部分でした。半分埋め込むタイプの洗面器を選んだので高さも使い勝手がいいですし、正面のタイルも一見シンプルな白いタイルですが間接照明を灯すと、タイルの凹凸が引き立って雰囲気が良いので気に入っています。
―ご主人の部屋は完全に独立しているのですね。壁面のギターや機材の数がすごいです!
ご主人:ギターは仕事ではなくて趣味です。パーツを組み合わせてギターを作ったり弾いたりしています。友人とデータを送り合いながら曲を完成させることもあります。
奥様:コロナ禍以前から在宅ワークをしていたので、主人の部屋を独立させることは最初からコンセプトの一つでした。趣味のギターも楽しめるよう壁一面をすべて収納にしています。
▷ご主人の部屋の壁面には可動式の有孔ボードで引き戸を設置。綺麗に整理整頓されていて一つ一つを大切にされている様子が窺えます
齋藤:デスクをL型にしたり、スライド式でキーボードを出し入れできるようにしたりと、使い勝手が良くなるようアイデアがありましたね。
奥様:そうですね、デスクの天板は家具屋さんでいろいろ見た中でリノリウムにするのが良いかなと提案しました。
ご主人:リノリウムは質感がすごく良いですね。デスクまわりにパソコンやサーバーなどの機器がたくさんあり、それが壁面収納のミキサー類とも繋がるのでケーブルもすごい本数で。
―なのに、すごくきれいに収まっているのが素晴らしいです。配線はご自身で?
ご主人:1週間くらいかかりました。せっかくきれいな部屋を作ってもらったので汚くするのは悪いなと(笑)。
―リノベをされて1年半。暮らしはどう変化しましたか?
ご主人:以前は「70平米って狭いなあ」と感じていたのに、デッドスペースがなくなったおかげで家全体が広くなったと感じます。特に廊下を活用できているのが大きいですね。
奥様:デッドスペースはとことんなくしましたし、廊下の動線は整理されたと思います。帰宅して玄関で上着を脱いでハンガーにかけて、洗面台で手を洗い、整った状態でリビングへ入るという流れがすごくスムーズになりました。今までは通路でしかなかった廊下に一連の流れで必要な機能が加わったのは大きな変化ですね。
▷花粉症対策もあって玄関ですぐにジャケットやコートを脱いでかけられるように。写真正面の扉は、奥様がダイニングテーブルでお仕事される際に丸見えにならないよう上半分だけをガラスにしました
▷玄関の収納はキャスター付き。靴を履く時に腰掛けられるように作ったのですが、今はもっぱら娘さんの遊び道具として使われています
▷仮住まい中に押し入れの中段を利用してアイロン掛けをしていたことに着想を得て、廊下の手前に家事スペースをプラス。毎日のように活用しているそうです
▷廊下の途中に設けたウォークスルークローゼット。家でかくれんぼをすると定番の隠れ場所にもなっているとか
―もはや廊下とは言えないくらいに用途が盛り込まれていますよね。
ご主人:はい、ここはもう廊下じゃないですね。洗面台があるので身支度スペースにもなりますし、ウォークスルークローゼットとも繋がっているので着替えスペースにもなります。それと、廊下もリビングも同じ床材にしたことも広く見える一因だと思います。フローリングの質感も気に入っていますね。
奥様:無垢ではありませんが、3〜4mmの厚さがあって、うづくり加工で表面に凹凸があるので、素足で歩くととても気持ちいいです。変化でいうと、なるべく家を汚したくないと思うようになりました。以前はちょっとキッチンに汚れがついても「まあいっか」だったのが、すぐに拭くようになりました(笑)。
ご主人:その姿を見ていると、私も意識が変わって、洗面台の水飛沫も拭くようになりましたよ(笑)。出張で外泊することもありますが、家にいるほうが快適だから「早く帰ってきたい」と思うようにもなりました。
―それは何よりもすばらしい変化ですね! ご家族皆さんが楽しく心地よく暮らしていらっしゃるのが伝わってきました、今日はありがとうございました。
▷床は奥様のお好みでオークをセレクト。元々持っていたオーク材のダイニングテーブルに加えて、テレビボードも同素材のものを新調し全体に統一感が生まれました
奥様のこだわりの詰まった自宅リノベは、細部に至るまで意図が明確。ですが、妥協しなかった=やりたいことを全部やったわけではないというお話が印象的でした。「できない理由を理解することで納得できたから後悔はない」とのこと。家づくりの過程を楽しんでいらしたことがうかがい知れました。また、ダンスと空手を習っている娘さんは身のこなしが軽やか!階段以外にもいろいろなパーツを使ってロフトを昇り降り。家じゅうが遊び場になる賑やかな暮らしが言葉にせずとも伝わってきました。
↓N様邸の画像をまとめてご覧になりたい方はこちらから(Pinterestのサイトへ移動します。)
長く住まわれている自宅リノベーションでは、生活するなかで不便なことや気になることを改善したい、というところから始まることも多くN様も具体的なイメージを持っておられました。また、住戸内のスペースを使い切ることも目的の一つで、解体後に現れるスペースを広さに活かす場合もあるが、N様邸では主に収納の計画に活用しています。
高さや断面方向の検討が随所に行われており、調整内容としては取り合う箇所が多くなるので全体の構成はやや複雑でしたが、合理的に納まっているのは、「家族の生活を熟知している設計者」の視点があったからだと思います。ロフトの上下を自分らしく使っているお子さんの様子やギター圧巻の仕事部屋、素材感と色彩でつくられた室内は楽しく優しい雰囲気で、これからも大切に住まわれていくことと思います。
不動産探しから施工まで、リノベーションに関するあらゆるご相談に、幅広くお答えします。リノベーションコーディネーターが無料個別相談会を行っていますので、お気軽にご予約下さい。まずは、じっくりとお話ししてみませんか。
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