ファミリー/71〜80㎡
ご主人はソフトウェアエンジニア、奥様はアスレティックトレーナー。共にご自宅で仕事をされることも多い内藤さんファミリーは、お子様の誕生を機に住み慣れた三軒茶屋で中古マンションを購入。奥様の職場であるトレーニングルーム、その奥にはご主人のワークスペース兼グランドピアノが置かれた部屋がある、職住一体の住まい。空間づくりの工夫や、都心近郊ならではの暮らしの楽しみなどを伺いました。
——グランドピアノがかっこいいですね!
ご主人:ずっとピアノを弾いてみたくて、コロナ禍で時間に余裕ができたタイミングで近所のピアノ教室に通い始めました。
▷このお部屋は防音のために天井や壁は遮音シートを貼って、外部へ音が伝わりにくいようにしています
——大人になってから始められたのですね。
ご主人:そうです。弾きたい曲のジャンルも深く考えずに入門しましたが、たまたま近所の教室がクラシックピアノの先生だったので、最近は、弾くのも聴くのもクラシック音楽が多いです。続けているうちに新しい世界を知れて、どんどん楽しくなりました。
——始めてすぐにこちらのピアノを購入されたのですか。
ご主人:そこは慎重に段階を踏みました(笑)。まずは電子ピアノを買ってちゃんと練習を続けられそうかを試して、次にグランドピアノをレンタルして部屋に合うか、近隣迷惑にならないか、を確認したうえでこれを購入しました。今では、ピアノの練習は朝のルーティンになっています。このピアノはギターでいうエレアコのような仕様で、スイッチを入れると電子ピアノのようにも使えるんです。なので、朝は電子ピアノにして小さな音で弾いて、仕事の合間の気分転換や休日は通常のグランドピアノのようにアコースティックで弾いて使い分けています。
——同じお部屋でお仕事もされてるんですよね?
ご主人:そうですね。月に数回出社する程度で、基本的には1日の半分以上はパソコンの前でこもっています。ピアノとデスクの間にスポッとはまって(笑)。隠れ家のような雰囲気にしたかったのでとても気に入っています。
——ご主人の部屋はかなり奥まった位置にあるので、なおさら隠れ家っぽさがあります。
ご主人:玄関から入ってL字型の一番奥にあるので、生活導線からは切り離されるんですよね。その間取りを活かしつつ、ウォークスルークローゼットはあえて窓をつぶしました。明るさを絞ることで洞窟のような雰囲気にしていただきました。
▷トレーニングルームから見た洗面、WTC、ご主人の部屋。WTCには元々窓がありましたが、遮光のために取り外し可能なパネルで遮蔽しています
▷天井面は配線ダクトを配していますが、ペンダントやウォールライトを所々に配置し、暮らしのシーンに合わせて使うライトを変えて雰囲気をチェンジ
——ご自宅全体が、玄関を中心に左右で雰囲気がまったく違いますよね。右が居住スペース、左がワークスペースという感じでしょうか。
ご主人:そうですね。実はこの家、2軒をくっつけているんですよ。おそらく分譲時に購入した方が、すぐに壁を抜いて一つにしたようで、私たちが購入した時には既に一つの家でしたが、排水管や吸気口は2軒分あります。おかげでリノベの際にトイレや浴室の位置をずらしやすかったので、ラッキーでした。
▷足場板を使ったシューズラック。絵画を飾ることで物置ではなく、ひとつの空間として締まります
▷ご主人こだわりのアーチ型の玄関。ベビーカーも入る広々とした土間スペースは、お客様からも褒められることが多いそう
奥様:以前は、今リビングになっているところにトイレやお風呂がありましたが、壁を取り壊してみると、向こうにも排水管や換気口があったので、リビングを広く使えました。
——リビングの使い方がとてもユニークです。
ご主人:事例を見ながら、広いワンルームで使いたいと思っていたので、居住スペースとしてはこのひと部屋ですね。空調がしっかりと効くかが懸念点でしたが、1年を通して暑さ寒さはあまり気にならなかったですね。窓がたくさんあって風がよく抜けるので、特に春と秋は本当に気持ち良いです。
——リビングにベッドがあると就寝時に音や照明は気になりませんか?
ご主人:夜は照明をかなり落としているので気にならないですよ。
▷ダイニングテーブルにはLE KLINTのブラケット照明、ベッド周りにはストリングライト。夕方から夜を迎える時間に、いい雰囲気を演出してくれています
奥様:あと、我が家はそもそも騒がしいんです(笑)。三軒茶屋の街もにぎやかですし、部屋でもいつも音楽をかけているので、静かな空間を作れる自信がない(笑)。娘もそういう環境に慣れているのか、周りの音に関係なく寝起きしてくれるので助かっています。
ご主人:音に敏感な人だとうるさいと感じるかもしれませんが、私たちとしてはこのにぎやかな空間が嫌いじゃないですね。トレーニングルームの窓から外の通りが見えるのですが、夜も街灯が綺麗なんですよ。
奥様:窓際の棚をベンチ代わりにして座ると、トレーニングルームからキッチン、リビングを一直線に伸びていく室内の景色もいいよね。
ご主人:そうだね、間取りを検討する際には、ここの視界が抜けるようにしたいとリクエストしました。夜も街灯が部屋の中まで差し込むので、照明を落としてもけっこう明るいんです。
▷トレーニングルームの懸垂バーは形状がユニーク。躯体表しの壁とも相性ぴったりです
▷LDK+寝室の窓の近くはタイル床。天井には室内干しができるよう、ハンガーバーをつけました
奥様:私が夜、外での仕事を終えて帰ってくるとたいてい夫はトレーニングルームにいます。仕事を終えると、トレーニングルームのピラティスマシーンや窓際の棚に座って、音楽をかけながらお酒を飲むのが好きみたいです。
ご主人:若い人も多くて活気のある街なので、窓から街行く人や車を眺めていると楽しいんですよ。
▷開放感があり、心地よいトレーニングルーム。カーテンレールを設置したものの今は何も付けていないそう
——奥様はトレーニングルーム以外でもお仕事をされているのですね。
奥様:ここでトレーニングをすることもあれば、お客様のご自宅に伺うこともあります。アスリートの方のリハビリをメインにトレーニングを行っていて、その方の状態に合わせてマットやチューブなどを使います。リハビリの場合は負荷を調節できるピラティスマシーンとの相性が良いですね。
——ピラティスマシーンはこちらに越してから購入されたのですか?
奥様:いいえ、以前の家ではリビングに置いていました。今は専用の部屋に移動できたのでより使い勝手がよくなりました。以前の家からずっと通ってくださっているお客様が多く、この部屋自体もすごく好評で。光もたくさん入るし風も抜けていくので「気持ち良いですね」とよく褒めていただきます。特に朝は光が綺麗で良いですよ。主人は朝起きると、ここでトレーニングをしてから仕事をしています。お客様のためにも、私たち家族のためにもトレーニングルームがほしかったので、この部屋のおかげで家族も運動する習慣ができてよかったです。
▷この部屋の主役、ピラティスマシン。異素材が混ざり合った空間にあるので、違和感なく馴染んでいますよね
——ご主人はトレーニングをしてピアノを弾いてから仕事をされるのですね。理想の生活です!もともと朝型なのですか?
ご主人:はい、もともと朝型なので、夜は遅くとも24時までに寝ています。
奥様:22時くらいからウトウトしているよね(笑)。私はどちらかというと夜が好きです。
——長年三茶にお住まいとのこと。工事期間中も様子を見に来られましたか?
ご主人:実は以前住んでいた家が定期借家で、この家の竣工を待たずに退去しなければいけなかったんです。リノベの工事期間中は、鎌倉の友人の家に居候させてもらって、家族3人と猫1匹を連れてひと夏を過ごしました。鎌倉からは片道2時間くらいかかるので頻繁には見に来られませんでした。工事の終盤にDIYで床にオイル塗装をしたくらいです。
奥様:大変でしたが、楽しかったですよ。お友達の家も素敵でしたが、鎌倉周辺は素敵な家が多いので、お散歩しながら家を眺めているだけでも楽しかったです。その時に見た、タイルを使った表札が綺麗で。そこからインスピレーションを得て洗面のタイルを選びました。
——ひとつひとつ微妙に色が違ってとても可愛いです。
ご主人:タイルって汚れにも強くて実用性も高いですね。キッチンもコンロ周りをタイルにしたら、掃除がしやすくて良かったです。
▷オールステンレスのキッチンはIKEAをカスタマイズ。天板はシゲル工業のもので、シンクは760mm幅にしました
——キッチンの使い勝手はいかがですか?
奥様:もう、なんにも不満がないです!動線もスムーズですし、収納もたくさんありますし、本当に気持ちよく料理ができます。私が料理好きなのですが、娘が生まれてからますます台所に立つ時間が長くなったので、このキッチンで助かっています。
ご主人:EcoDecoさんがIKEAのキッチンを勧めてくださったのですが、見た目も機能性も良いですね。フルオーダーでキッチンを作ると予算が上がってしまうので、うまくIKEAを取り入れながら作るとコストパフォーマンスが良いですね。ただ、サイズオーダーができないので、IKEAのキッチンに合わせて他のサイズや壁の位置を決めないと余計な隙間ができてしまいます。そういう意味ではリノベーションと相性が良いと思います。
▷キッチン裏に設けた細い空間はビールやお米を置いてパントリーとしても活用。上部には本棚を作りスペースを有効活用しています
▷玄関土間の収納スペースには、趣味のアウトドア用品をまとめて収納できる場所を確保しています
ご主人:面材や取手は部屋の雰囲気に合わせて好みのモノに変えていただきました。それと人生で初めて食洗機を使いましたが、導入して正解でした。
奥様:当初、私は「別にいらないんじゃない?」と、どちらかというと反対派でしたが、使ってみるとめちゃくちゃ良かったです(笑)。毎日たくさんの品数を作るので、以前は皿洗いだけで精魂尽き果ててしまうこともありましたが、それがなくなりました。大容量の食洗機にしたので、お皿だけではなくて五徳とか排水口のパーツ類も毎日洗えて清潔に保てますし、洗っている間にキッチンの拭き掃除もはかどるので時短にもなっています。
▷キッチンカウンターに食材や料理が並んだ様子。内藤様のご友人撮影のお写真をいただきました
——食洗機があるならシンクはここまで大きくしなくてもよかったですか?
奥様:いえ、それとこれとは話が違います(笑)。野菜を洗ったり、料理をしたりするには、やっぱりシンクは大きいほうが良いですね。立ち上がりのスペースもできた料理をどんどん並べられて便利です。以前、友人が遊びに来た時、廊下側からキッチンの写真を撮ってくれたことがあって。それを見ると小料理屋さんのような良い雰囲気だったんです。私はキッチン側に立っているので気づきませんでしたが、「こちら側からはこんなふうに見えるんだ」とうれしかったですね。
——調理道具や調味料の様子からもお料理好きなのが伝わってきます。
▷キッチン内は冷蔵庫を中央に配置したコの字動線。たっぷりと収納を設けています
▷リビングに置いた背もたれはリーン・ロゼのもの。滑り止め付きで床に置いたり、ベッドに置いたりと多様に使えてお気に入り
——家づくりのイメージを広げるのに参考にしていたものはありますか。
ご主人:好みのインテリアやありたい姿をイメージしながら、ずっとPinterestとYouTubeを見ていましたね。
奥様:キッチンやトレーニングルームのパーツは、私も一緒に選びましたが、基本的には主人に内装も家具選びも任せていました。
▷猫ちゃんはお子さん用の小さな机でお昼寝中
ご主人:設計していただく前に自分たちの生活パターンを整理したのもよかったです。インテリアのテイストは好みを真似ることはできても、生活スタイルは真似できませんから。
——たしかに。内藤様のリビングにベッドを置くのをアリとできるのも、お二人の生活スタイルがあってこそですよね。
ご主人:人によっては「なんでリビングにベッド?」「なんでキッチンの横で寝るの?」と思いますよね。朝型なのか夜型なのか。ワンルームなのか細かく区切るか。食事は家族みんなでとるのか。基本的なことだとは思いますが、そういったことを整理したのはよかったです。
——YouTubeでよくご覧になっていたチャンネルはありますか?
ご主人:インテリアや家づくり系のチャンネルをよく見ていました。国内ですと「クリエイティブの裏側」、海外ですと「Architectural Digest」とか。そういうチャンネルを見ているうちに関連動画がどんどん出てくるので、インテリアやルームツアー系の動画はたくさん見ていましたね。
——家具や小物は実際にお店で見て選びましたか?
ご主人:ほとんどがネットでの購入ですが、お店で見てから買ったものもあります。
奥様:ダイニングテーブルは、蚤の市で欲しいテイストやサイズを見ておいて、ヤフオクで落札しました。以前の家の家具家電はほとんど処分して買い直しました。ベッドも新調しましたし、持ってきたのは冷蔵庫と電子レンジくらいです。
ご主人:ウォークスルークローゼットのチェストも実物を見ずに買ったのですが、あれはちょっとギャンブルでした。結果的に、ぴったりでよかったです。
▷トレーニングルームの奥にあるウォークスルークローゼットは“洞窟感”満点!ご主人のワークスペースへと繋がります
▷田園都市線に馴染みがある方はピンとくるかも?トイレのタイルは三軒茶屋駅構内のタイルと同じ配色です
▷部屋のあちらこちらに飾られた絵は、奥様のお父様とご主人のお祖父様の作品!今も新しい絵をリクエスト中だそうです
——EcoDecoは設計から担当しましたが、リノベを前提にこの部屋を購入されたのですよね。
ご主人:よく「満足できる家を作るには3回建てないと」などと言いますよね。3回建てるかはわかりませんが(笑)、もし将来、戸建てを建てたいとなった時に備えてという思いもあって、まずは内装やインテリアについて学ぶためにもリノベーションはやりたかったです。
——引越しされて1年が経ちましたが、暮らしはいかがですか?
ご主人:大満足です。生活スタイル自体はあまり変わっていませんが、間取りや設備に無駄がなくてピタッとハマった感じがします。けっして広い家ではありませんが、すべての空間を有効活用できているのが心地いいです。オーダーメイドのスーツを着ているような感覚があります。
——「3回家を建てないと」というお話がありましたが、将来的には引っ越す可能性もありますか?
ご主人:家作り自体が楽しかったですし、その可能性はあるかもしれません。
——二拠点生活などもあり得ますか?
ご主人:住んでみたい場所はたくさんありますが、住んでいない方の家のことが常に心配になりそうな気もしますね。
奥様:たしかにそれはあるね。私たちは東京が大好きですし、都内にいても四季の豊かさは感じられますし、少し足を伸ばせば山もたくさんありますからね。明日も友人家族と一緒に奥多摩で日帰り登山をする予定です。来月、娘を背負って屋久島の山に登るので、その予行演習を兼ねています。
——アクティブですね!さまざまにアンテナを広げて日々を楽しんでいらっしゃることが伝わってきました。今日はありがとうございました。
▷終始おとなしく優雅な姿を見せてくれた愛猫メインクーンのネウちゃんと長女ののんびりとした可愛いツーショット
車の走行量も多く賑やかな環境に加え、2軒がくっついた変則的な間取り。一般的にはネガティブにも思える条件ですが、内藤さんにとっては「そこが良い」とポジティブに転じるもの。インタビューの中でご主人もおっしゃっていましたが、まずは自分の生活スタイルや心地よさを感じるモノやコトの棚卸しをするのが、理想の住まいを手に入れる第一歩だなと感じました。
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