ファミリー/40〜60㎡
新婚当初に中古マンションを購入後、1年足らずで海外赴任が決まったM様ご夫妻。その間にお子様が二人が生まれ、今では中学生と小学生に。家族構成が大きく変わり帰国後ご自宅をフルリノベーションされました。4人で55㎡だと狭いのかなと思いますが、実際にお邪魔するとコンパクトながらも抜け感があり気持ちの良い空間でした。その秘訣や工夫のポイントについて設計を担当した齋藤と共にお話を伺いました。
ー ご自宅をリノベされたということですが、いつごろ購入されたのでしょうか?
奥様:結婚した翌々年、2002年にこのマンションを購入しました。当時はまだ築5年でとてもきれいだったので、玄関側の洋室をフローリングに変えたくらいでそのまま住んでいました。
ご主人:サラリーマンにありがちな話ですが、購入してほとんど住まないうちに私が海外転勤になりまして。当初、赴任期間は2年間の予定で短期間だろうと、賃貸にも出さずそのままローンを返済し続けていました。ところが、海外生活は延長となり2009年まで海外生活が続き。その間実際に住んではいないけれど住宅ローンを払い続けていました。
奥様:2005年にインドネシアに住んでいる頃に長女が生まれて、2009年に帰国して、翌年に長男が生まれ、2012年からはシンガポールで暮らし、帰国したのが一昨年の2017年。購入してから16年が経ちますが、海外での生活の方が長く、ここで暮らした期間はすごく短いんです(笑)。
ご主人:ただ、2度目の海外赴任時からはここを賃貸に出して、帰国後はどういう暮らしにしようかという話もしていました。夫婦二人の時は十分な広さでしたが、十数年の間に子供も大きくなってきたので、帰国後にここで住むのは難しいのかなとも思い、新築のマンションや、他の中古マンションを購入してリノベーションをするかで迷っていました。
奥様:私がリノベーションに以前から興味がありまして。最初にこのマンションを購入した時も「ここの壁に壁面収納があったらいいな」と想像を膨らませたり、リノベーション雑誌を眺めたり。シンガポールに引っ越してからは、なかなか日本の雑誌が手に入らないので、ネットを見ながら夢を膨らませるのがすごく楽しくて。中でもEcoDecoのブログで岡野さんの「物件を読むコツシリーズ」は「解体するとこうなっています」とか「間取りを考える時気を付けること」などとても分かりやすく解説されていて、そこから感じる誠実な印象にも惹かれて、更新されるのを楽しみに毎晩愛読していました。
ご主人:帰国後、新たにマンションを購入するか自宅をリノベするか決めきれずに、EcoDecoさんを含め3社のリノベーション会社を訪問しましたが、先に回った2社では、この部屋をリノベーションするという話を考え進めてくれることはなかったですね。
奥様:もっと広い部屋のリノベ済み物件への住み替えをおすすめされたり、「55㎡で4人だと2段ベッドを2つ入れますかね」なんて笑われたりしたこともあって、やっぱりこの広さだと住み続けるのは難しいのかなと思いながら、EcoDecoさんを訪問しました。始めは住み替え物件の内見と自宅リノベどちらの可能性も相談し進めて頂きましたね。設計担当の齋藤さんから、これまではどういう暮らしをしているのか、どのように暮らして行きたいか、話をしっかりと聞いてくださったのがうれしくてグッと心惹かれました。いろいろと話していても楽しくて信頼できたので「やっぱりこの部屋をリノベしよう!」と決めました。
▷収納には無印良品のケースを活用。特に衣装ケースは海外での引っ越し時もそのまま運べるので便利だったそうです。
齋藤:M様は、これまでにいくつかの国でそれぞれの生活環境に適応して生活してこられ、住まいに対して柔軟な考えを持っているように感じましたし、ご家族の距離感が近いのかなと思いました。それで55㎡でも4人で住みこなしていけるように思いました。
ー 住み替えではなく、ここでの暮らしを選んだ理由はなぜですか?
奥様:一番は子供の通学を考えてですね。管理体制や住民の方の雰囲気の良さも実感していましたし、ローンを払った意地もあるかもしれません(笑)。2017年に帰国した時点で住宅ローンを完済していたので、せっかく好きな家なのに、ほとんど住まずに手放すのもどうかなと。それと、長女が中学生、長男が小学生になって、なんとなく教育費の予測ができつつあるので、住宅費よりも子供の教育にお金をかけてあげたいという気持ちもありました。だから「4人家族でここに住むのは難しいのかな。でも、できれば住みたいな」と葛藤していましたが、齋藤さんや谷口さんと話をしながら「この家で暮らしていけそう!」と思えるようになりました。
ご主人:私たちも40歳を過ぎて、近い将来子供たちが独立することも考えると、一時的にはこの広さを小さく感じることもあるかもしれませんが、自宅を使いやすくして住み続けようと思いました。
奥様:海外在住時は広い家に住んでいたこともあるのですが、個室があっても我が家は1箇所に集まっていたので、狭くてもなんとかなるかなと。それと、ある程度子供達が大きくなった今、自分たちの考えもあるので、このリノベが実現できたのかもしれません。まだ子供が幼い頃だったら、将来に備えて子供部屋は必要と考えていたと思いますが、娘自身が「個室はなくていいよ」「一緒に寝るよ」と言ってくれたので。
娘さん:どんな部屋でも大丈夫と思っていましたし、自分の個室がないことは特に気になりませんでした。
奥様:「こうじゃないと!」というのがなくて寛容なところは彼女の良さだと思います。
齋藤:この柔軟性な考えを受けて、計画は前進して行きましたよね。
ー 具体的にはどのような部屋を望まれましたか?
奥様:元は2LDKの間取りで、玄関側の西向き部屋が暗くて皆に使われず、リビングダイニングとその隣の和室に4人が集まる状態にだったのでそれを改善したかったですね。子ども達のそれぞれの場所をつくることも希望しました。
ご主人:他には築24年の建物なので、設備の更新、収納をすっきりすることや部屋が寒い事を改善したいとリクエストしまた。
▷スタディスペースに設けたデスクのおかげで部屋の使い方が多様に広がりました。
ー 実際に暮らし始めていかがですか?
奥様:お願いしていたとおりに居場所は分散しました。スタディスペースの出窓カウンターを延長して机としたので、娘がそこで勉強したり、息子はロフト下の収納スペースでゴロゴロしながら読書をしていたり、誰かがロフトの上で昼寝をしていたり。
齋藤:「誰かが」っていいですね。
娘さん:弟やジゼル(犬)とかくれんぼしていることもあります。
▷将来のことを考え、ロフトへの昇り降りはハシゴではなく、階段にしました。
▷ロフト収納には照明があり、お子さんが愛犬ジゼルとここで遊んでいることも。
奥様:以前は、息子はリビングかダイニングいることが多かったのに、今はロフトの下や、押入の上に登っていたり、押入の中に居たり「どこにいるの!?」って探すことも。居場所がいろいろあって楽しいみたいです。
ご主人:出窓に設けたデスクを娘が使っていない時は、私がパソコンで使うこともあります。
奥様:今日は私で、明日は娘という使い方でも構わないし「こだわりがないのがこだわり」というか、誰が使っていても私たち家族はあまり気にしないので、いろいろな使い方ができるのはいいですね。私はキッチンかダイニングにいることが多いですが、小上りの畳でゴロゴロするのもお気に入りです。上がると視界が広がってすごく気持ちいいですし、寝ながらニコニコしています。ソファはないけれど、畳だと何人でも寝転がれるのもいいですよね。
ー 畳の小上がりは寝室としても使っているんですよね。使い勝手がよさそうです。
奥様:寝室だけの部屋は作りたくなかったので、リビング兼用としました。シンガポールに住んでいた時にヨガの資格を取得したので、地元のお友達を呼んで、ここでヨガを教えることもありますし、床下は全面収納になっています。
▷愛犬ジゼルちゃんがちょこんと座ってくれました。左上には、ゲーム中のお子様。押入れの上は人が乗ることもできる強度にしてあるので、時には息子さんの遊び場としても使るんです。
ー 高さを設けたのは収納スペースを増やすためですか?
齋藤:部屋の面積を増やすためですね、ただ窮屈な印象とならないよう抜けや、つながりを感じるよう心掛けました。あとは家のサイズに合わせて階段も押入れもデスクも通常より寸法を小さく設計しています。「4人55㎡」を成立させるには各部分を合理的に配置組み合わせていく必要がありました。
奥様:からくり沢山の忍者屋敷みたいな造りにはしたくなかったので、それぞれのスペースに自然な感じでいくつも機能を加えられたのはよかったです。
▷畳の下はすべて収納スペースに。大型のスーツケースや季節家電などをたっぷりと収納できます。
齋藤:「お母さんの気配をなんとなく感じていたい」というお子さん達が思っていることを教えて頂いたことが印象に残っていて、全体がなんとなくつながっているような計画となりましたね。スタディーコーナー側からもキッチン付近が見えますし。
奥様:結果的に完全に個室になっているのはトイレくらいですね。いろいろな案を提案して頂いた中でロフト2つを設けるプランもありましたが、将来また夫婦二人で暮らすことも考えると、物の上げ下げやハシゴで上り降りをするのは負担になるので、ロフトは1つで階段をつくってもらいました。
息子さん:家の中に階段ができたのはうれしかったです。
ー ロフトはどのように使っていますか?
ご主人:夜は私がロフトで寝ています。手元にライトもコンセントもあって便利なんです。
奥様:読書したり夜更かしもしやすいもんね。私と子供2人は畳で寝ていますが、特にそう決めているわけではなくて、寝るのもどこでも構わないんです。ロフトの下は収納スペースですが、息子が本を読んだりおもちゃで遊んだりと、秘密基地のような感覚で使っています。
▷カーテンはつけず、ほどよく光が差し込む調光スクリーンを使用しています。
ー 娘さんは新しい家の住み心地はどうですか?
娘さん:毎日朝光を受けて、明るく開放的に目覚められるところが気に入っています。
奥様:シンガポールで暮らしていた時は、1年を通して朝7時くらいにならないと夜が明けず、この家では朝日で目覚めたくて、カーテンではなく調光ロールスクリーンにしました。以前は窓側や廊下が寒かったので、リビングの中央に集まっていましたが、インナーサッシを設置したことで外の暑さ寒さは解消され、窓近く座ったり寝転んだりしても快適ですし、家全体を広々と使えるようになりました。娘は部活でフルートを吹いているので、日中は窓を閉めて練習していることもあります。
ご主人:玄関に引戸を設けたのもよかったです。この戸の外側と内側では境界線があるくらい温度が違うことを実感しました。
▷鏡の下部分のタイル貼りはDIYで仕上げられました。
▷デッドスペースを生かして、しっかりと収納を設けました。
ー DIYにもチャレンジされたそうですね。
奥様:洗面のタイル貼り、フローリングや、建具などのオイル塗装をしました。扉は少し木目が見える白い塗料を提案してもらいました。齋藤さんにレクチャーしていただきながら塗るのは楽しかったです。
ー DIYはもともとお得意なんですか?
奥様:海外生活は不便なことも多くて、自分で色々とチャレンジしているうちに、修理やDIYに対しての抵抗がなくなりました。ここに引っ越してからも、収納スペースが足りなくなったので、イケアの棚を買って好みの高さに脚を切って配線しやすいように天板にも穴も開けたりと楽しんでやっていますね。
▷ダイニングの壁は一面を優しいグリーングレーに塗ってあり、部屋全体に明るく優しい印象を与えています。
ー EcoDecoに依頼してよかったことは?
奥様:私たちの話をじっくり聞いたうえで提案してくださったところかな。例えば素材一つ一つに対してもいろいろと提案してくださったので、全部を自分たちで選んだという感覚があります。また、住宅ローンの組み方をアドバイスして頂き、とても助かりました。家のローンを完済していたので、もう一度ローンが組めるのかどうかがわからなくて。完済した銀行に相談したら、そういうことはあまり前例がないと言われたのでどうしようかと。
ご主人:今は住宅ローンの金利って低金利なイメージがあったのに、リフォーム単体での融資は金利が高くて驚いたり、銀行によってはそもそも取り扱いがなかったりしたのですが、コーディネーターの谷口さんにご相談したら、丁寧に教えていただけてスムーズに進めることができました。
ー 他に大変だったことはありますか?
奥様:我が家の状況に合う仮住まいを探すのが大変でした。引っ越しも2回しなくてはならないですし....そのあたりは自宅リノベの難しい部分だなと思いました。結局、ここから徒歩15分くらいのURを借りました。「せっかくだから楽しもう!」と、この家では体験できないルーフバルコニーのついたお部屋にして、そこで息子がスケートボードを習得してここに帰ってきました。
ご主人:狭かったけど、眺めもいい部屋だったよね。
奥様:毎日地元の小学校まで息子を自転車に乗せて送り迎えをしたり、段ボールに囲まれた生活をしたりしていたので、完成はすごく待ち遠しかったです。娘はずっと犬を飼うことに憧れていたのですが、引っ越してすぐにこの子(ジゼルちゃん)とたまたま出会えて、娘の夢も叶いました。
ご主人:本棚に犬の本のコーナーがあるくらい、ずっと夢見ていたよね。
奥様:最近、娘は犬のジゼルと一緒にスタディスペースで寝ている日もあるんです。
かわいい家族も増えて、新しい家での暮らしを皆さんが楽しんでいらっしゃるのが伝わってきました。今日はありがとうございました。
取材時もご家族皆さんで迎えてくださったM様ファミリー。お子様の意見も取り入れながらのリノベーションは家族みんなで作りあげた家という感じが伝わってきて、ご家族が仲良しでいらっしゃるからこそ実現したのだろうなと感じました。お子様が独立されたあと、またご夫婦お二人での暮らしになった時はどんなお住まいになるのか、またいつか拝見してみたいと思った訪問でした。
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