ー開放感×おこもり感のコントラストを楽しむー
ファミリー/71〜80㎡
新築マンションも戸建も考えていた久須美様ファミリーが選んだのは「遊び心がある」と感じたマンションリノベーションでした。お子さんが自由に走り回り、奥様がキッチンからその様子を見守り、ご主人がサブリビングでギターを楽しむ。そんな“こうしたい”を叶えた暮らしづくりの道のりと今の暮らしについて、設計の齋藤と共に伺ってきました。
ー久須美さんのお家は、あまり扉で仕切らず全体がゆるやかに繋がっていますね。
ご主人:そうですね。回遊性のある空間へ訪れた際に、子どもがぐるぐると走り回って楽しそうだった様子を見て、そんな家にできたらと思っていました。
奥様:出会ったこの家は階下に住居がないお部屋なので、文字通り走り回ることができます。昨日も「鬼ごっこしよう!」って部屋じゅうを走り回っていました(笑)。そういう姿を見ていると、コロナ禍になる前にこの家に引っ越すことができて本当によかったと思います。なかなか思うように外で遊ぶことができない日が続いても、この家なら体を動かせないストレスは少ないんじゃないかな。もともと家族で広々過ごせるリビングにしたいという思いはありましたが、こういう状況になって、なおさら広いリビングの良さを感じています。
ご主人:リビングの設計もそうですが、齋藤さんと打ち合わせを重ねる中で、私たちはストレスがなく暮らせる家づくりに重きを置いているんだな、ということを自覚していきました。たとえばレコーダーはテレビの下にあることが多いですが、機能性を考えると上にあったほうがいいいのかなと思ったので、AVボードは置かずにTVの上に棚を作ってもらいました。かがまずに立ったまま操作できて、子どもがいたずらで開け閉めしたりする心配もありません。
ーそう言われてみると上のほうが便利そうですね。
ご主人:リビングの中心に大きなソファと大画面のテレビがあるようなテレビ中心の家は私たちの暮らしには合わなかったので、テレビもさりげなく置けるよう壁掛けにしたいとリクエストしました。
齋藤:テレビよりも、音楽を楽しまれるほうが多いですよね。
ご主人:最近は子どもが好きな音楽をかけることがほとんどなので、自分の好きな音楽を楽しんだり、掘り下げたりというのは難しいですけどね(笑)。他に、リビングに室内干しをしたくないというのもちょっとしたこだわりでした。以前の住まいでリビングに洗濯物を干すことがあり、くつろぐスペースなのに、なんだかイヤだなとずっと思っていて…。
奥様:私よりも主人のほうが綺麗好きなんです。掃除も片付けも本当に上手で、一人暮らしの部屋もすごく綺麗でびっくりしたことがあります。それを見習って私もモノを捨てられるようになってきました。
ご主人:神経質というわけではなくて、暮らしの中でも仕事でもいらないモノは減らして効率よくすっきりさせたいんですよね。
▷キッチン、リビング、シエスタスペース、それぞれに高低差を設けてゾーニングしています。
ーメインのリビングと、ソファのあるサブリビングはどのように使い分けていますか?
ご主人:サブリビングは私のリクエストです。妻は「キッチンは自分の部屋にしたい」という希望があり、サブリビングは私のスペース、という棲み分けがなんとなくありました。今はまだ子どもが小さいので、子どもが起きている時間はなるべく一緒にいたいという思いがあって、圧倒的に家族みんなでリビングで過ごす時間が長いですね。
奥様:夜、子どもが寝室で寝た後はソファでくつろいで、もし夜泣きをしたらすぐに様子を見に行けるなと想定していたのですが、実際は、夜遅くなっても子どもがなかなか寝ないので、なかなかそういう使い方はできていません(笑)。
ご主人:妻が本を読んで、私は音楽聴いたりギターを弾いたりして過ごすイメージだったんですけどね(笑)。ただ、メインのリビングが広々として明るくて、サブリビングはモノがたくさんあって落ち着いた雰囲気なので、気分の切り替えができるのは良いですね。
齋藤:玄関、寝室、サブリビングは、壁や扉で仕切らず連続しているほうがいいとリクエストをいただき、玄関の高さをグッと下げて、サブリビングまで天井は同じ高さでつなげています。そこからリビングに抜けると一気に天井が高くなります。そうして天井に高低差を設けることで、リビングはより広く、サブリビングはくつろげる雰囲気にしています。
ご主人:リビングの一角に子どもがお昼寝をするような場所を設けていて、「シエスタスペース」と呼んでいます。
齋藤:二面はオープンですが、天井を下げて落ち着きのある場所にしています。ベッドの上に天蓋をつけるのに近い効果や感覚があると思います。
ー窓は二重サッシにされているのですね。
ご主人:全ての窓にインナーサッシを設置しました。元々はサブリビングの寒さと結露対策の意図でしたが、防音効果も高いですね。
奥様:マンションの前の道路が幹線道路ですが、インナーサッシのおかげで音が気にならないです。
ご主人:外から入ってくる音もそうですが、ギターを弾いたり音楽をかけたりした時に室内から出る音も防げるので、こだわってよかったです。細かいリクエストでいうと、EcoDecoさんの事例で使っているのを見て、キッチンの床材にはBOLON(ボロン)を選びました。
齋藤:スタッフの天井の自宅(記事リンク)リビングがBOLONなんですよね。「キッチンに使うのはどう思う?」と天井に聞いたら「粉さえこぼさなければとても良い」ということだったので、それを久須美さんにお伝えしました(笑)。
ご主人:キッチンはタイルにするかも迷ったのですが、冬場に冷たいことやお皿を落とした時に割れやすいことを考えて、タイルではなくBOLONを選びました。
奥様:脱衣所もBOLONにしています。お風呂上がりの湿った足で歩いてもペタペタする感じがまったくないので、水回りのBOLONはすごく気に入っています。
ーキッチンはどんなリクエストをされたのですか?
奥様:最優先だったのは対面キッチンですね。以前の住まいや、私の実家も、一度キッチンに入ると、背中を向けてしまって家族が何をしているのかが見えない造りだったので、絶対に対面にしたいと思っていました。
ご主人:「子どもが見えるようにしたい」と強く言っていたよね。
奥様:実際使ってみると作業もしやすいですし、コミュニケーションが取りやすいことがすごく良いです。調理中に子どもから話しかけられた時に「待ってね」と伝えつつも会話は続けられますし、何をしているのか見守ることができるのは、お互いに安心感があります。
齋藤:キッチンでの作業中、お子さんはどのあたりにいるんですか?
奥様:キッチンを囲むL字形のエリア全部にいます(笑)。それから、コンロのつまみの位置にもこだわりました。チャイルドロックが付いていても、解除の方法を覚えて誤作動してしまう可能性もあるかもと考えると、子どもの手が届かない天面で操作できるものを選びました。
ご主人:魚焼きグリルは付いていませんが、ロースターを別で買えばいいですしね。コンロだけではなく、洗濯機やオーブンなどの家電選びも、子どもの安全やリスクは気にして選んでいます。
ーお子さんがのびのびと過ごしやすくしつつも、安全に暮らせる工夫が凝らされていますね。
ーお子さんのことを暮らしの中心に置いていらっしゃるように感じるのですが、リノベーションのきっかけは何だったのでしょうか。
ご主人:子どもが大きくなるにつれて部屋が手狭になっていたので、賃貸の契約更新を機に引っ越しを考えるようになりました。子育てのことを考えるとどちらかの実家に近い場所であることや、私の通勤経路を考慮していたので、当初はリノベーションか新築かよりも、立地が優先事項でしたね。
奥様:その頃はリフォームしか知らなくて、リノベーションというもの自体を知りませんでした。たまたまSNSの広告でリノベーションの写真を見て、こういうのもおもしろそうだなと思うようになりました。
ご主人:新築マンションや建売の新築戸建てをいろいろと見ましたし、もう一度賃貸に住んでもいいかなとも思っていました。でも、内見をしていてもオートロックの小綺麗なマンションに自分たちが住んでいるイメージが湧きづらかったんです。そんな時にリノベーションという選択肢を知って、面白そうだし、私たちに合っているかもと思いました。
ー私たちに合っているというのは?
ご主人:すべてが新しくてぴかぴかで「どうだー!」というよりは、痕跡を残すことに面白みを感じたと言いますか、どこか日本文化にも通じる良さを感じました。実際に、この家もフルスケルトンにして何もかも新しくせず、一部に元々あったものや手を加えない部分を残していています。例えば、玄関の土間は剥がしてそのままにしていたり、既存の扉をそのまま使っていたり。予算を考慮しての部分もありますが、遊び心があっておもしろいと思って使っています。
齋藤:古いモノの中に新しいモノが同時に存在して見えるおもしろさというのは、まさにリノベーションの魅力ですよね。新たに作ることではできない良さがあると思います。
▷CDラックはご主人のDIYによるもの。ソファの高さとのバランスもバッチリ
▷玄関を抜けると目の前に土間スペースがあり、ベビーカーなどを置いています。
ーなるほど。物件探しは順調でしたか?
奥様:はい。ただ、契約の更新日まであまり時間がなかったので、リノベーション会社を探してから物件探しをスタートしていては間に合わないないだろうと、並行して探すことにしました。
ーこのマンションに決めた理由は?
ご主人:私の実家が徒歩圏内であることと、部屋の広さですかね。60平米のマンションを内見した時に「やっぱり70平米は欲しいな」と実感したので、ここは広さも十分でした。それと、明確に計画しているわけではありませんが、資産価値という意味では築年数や駅からの距離も考慮したほうがいいのかなと思っていたので、その辺りも少し考えました。
齋藤:将来実家に戻られる可能性もあるので、賃貸に出したり、売却したりするかもしれないというお話もありましたね。
ー選択肢を増やしておきたかったのでしょうか?
ご主人:そうですね。手放す際のことも一応想定しておこうという程度ではありますが。それと、どこまでリノベーションできるかはわからない部分もあったのですが「壁式構造だと壊せない壁がある」とか、「PSは動かせないことが多い」といった基礎的なことは調べたうえで購入しました。
ーEcoDecoを選んだ理由は?
奥様:EcoDecoさんの『中古を買って、リノベーション。』を読んだことがきっかけで、二人でオフィスを訪ねました。
ご主人:他のリノベーション会社さんも比較検討する中で、EcoDecoさんにお願いすることにした決め手は、工務店をコンペ方式で決めることでした。リノベーションについて調べている時に「工務店選びで後悔している」という声をいくつか見かけて、そういう失敗は避けたいと思っていたので。
齋藤:コンペ方式は、私たちが設計と施工が別だからこそできることです。施工に選択肢があることは私たちの特徴の一つかもしれません。
ご主人:もう一つ印象に残っているのが、初回の相談の際「賃貸の契約更新があるのでこの日までに引っ越したい」と相談をしたら、齋藤さんから「難しいかもしれません」と言われたことです。「スケジュールがタイトだと急ぐことが優先となり、工事にもそれが現れてしまう可能性もありますし、いいものができないと思います」とはっきりと言われたことで逆に信頼がおけるなと思い、EcoDecoさんにお願いしようかと妻に話しました。
奥様:主人の意見に賛成でした。本を読んで、EcoDecoさんが10年以上前からリノベーションを手がけてきていることも理解していたので、私もお願いしたいと思いました。
ーなるほど。どんな家づくりを希望していましたか?
奥様:当初は二人とも具体的にこうしたいというのはありませんでした。「明るくしたい」「躯体を現してもいい」とか、ざっくりとしたイメージを齋藤さんにお伝えしましたね。
ご主人:二人で考えるというよりも、齋藤さんと一緒にイメージを固めていった気がします。齋藤さんからの質問に対して私たちが答えるということを繰り返して、「リノベーションってこんな風に考えていくんだな」と、流れを理解しながら少しずつ詳細を詰めていきました。
▷寝室は北側だが二面採光のため日射しはしっかりと差し込みます
▷複雑なかたちを活かしたウォークインクローゼットはすっきりと整理されています
齋藤:最初のヒアリングで「収納はそれほどいらない」とおっしゃっていたことが印象に残っています。
奥様:ウォークインクローゼットを2箇所に設けるプランも提案してくださったのですが、収納があまり得意ではないので、分散して物を収納するよりは1箇所にしたいと伝えたんですよね。私が、大きい収納だと「そこに入って見えなければいい」と、使いもせずに置きっぱなしのモノをどんどん増やしてしまう方なので(笑)、なるべくモノを持ち過ぎないようにしています。
ご主人:玄関に大きな姿見がほしいと妻がリクエストしていたので、じゃあクローゼットは姿見の近くに設けようと、玄関近くの位置に落ち着きました。ウォークインクローゼットは湿気がたまりやすいというのを聞いたことがあったので、風通しを良くするために2箇所に開口を設けてあります。
▷お子様の身支度スペースはラブリコと有孔ボードを使ってご主人がDIYしました。
ーお子さんの身支度スペース、かわいいですね。
ご主人:今年の春から幼稚園に通い始めたので、制服やカバンを収納するスペースをラブリコ(2×4木材を上下に固定して柱を立てられるDIYパーツ)と有孔ボードでDIYしました。今はセカンドリビングとして使っているスペースも、将来的には子供部屋にする可能性もありますし、使い方は変わっていくと思うんですよね。そうすると、大きな家具を置くよりもこういった簡単に取り外せるもののほうがいいかなと思います。
ー柔軟に変えられるのは良いですね。他にもDIYされたのですか?
▷洗面台は浅めの広め。お子様の靴なども洗いやすく便利だそうです
ご主人:洗面台のタイルは妻がDIYしました。一番大きかったのはリビングの躯体の塗装ですね。引っ越してすぐのゴールデンウィークに実家で子どもを預かってもらって、夫婦で白に塗装しました。匂いがこもってしまうので私たちも夜は実家に泊めてもらって、3日間くらいで塗り終えました。
奥様:ウォークインクローゼットのように入り組んだスペースだったら塗りにくかったと思うのですが、躯体壁はまっすぐな壁なのでそれほど難しくなかったですよ。
▷キッチンと洗面スペースを仕切る扉はDIYでグリーンに塗りました
ご主人:今よりも家具も多くなかったので少しずつ動かして塗っていけば、住んでからの塗装でも問題なかったです。キッチンと脱衣所をつなぐ扉はグリーンに塗って、寝室の扉はオイルを塗ったりもしました。
ー既存利用の扉もあるのですね。
ご主人:給湯器の扉は防音目的のためか厚くなっているのでそのままでいいかなと。トイレの扉もそのまま使っています。
奥様:違和感なく自然に収まっているかなと思います。
ー古いものの魅力を見出したり、お子さんの成長に合わせてレイアウトを変更したり、積極的にDIYされていたりと、リノベーションを存分に楽しまれているのが伝わってきました。今日はありがとうございました。
ーお話を伺っていると、間取りや家具のレイアウトはもちろんのこと、家電の選び方に至るまでお子様の安全を細やかに配慮していらっしゃることが伝わってきました。お二人目のお子さまをまもなくご出産ということで、二人のお子さんの成長や生活のリズムに合わせて、これからもどんどん暮らし方に変化がありそうで楽しみです。
↓ 久須美様邸の画像をまとめてご覧になりたい方はこちらから(Pinterestのサイトへ移動します。)
初めからイメージや要望が明確な方もいますが、久須美さんはニュートラルな感覚の持ち主でした。
家族にとって重要なことなのか、それ程拘らず簡易でも良いのか、何がストレスとなるのか…丁度良いとは何かを一緒に考えていきました。また、天井を大きく下げるような私からの提案にも先入観を排して取り入れてくださったりと、住まいについて様々な観点から考えて頂いたと思います。
完成後、久須美さんから「『施主、設計、施工の共同プロジェクトの一員』の様な感覚を持っています。」との言葉がありました。必ずしも計画通りにいかない場面はあるものですが、久須美さん持ち前の柔軟さと協力的な感覚で進んでいくプロジェクトだったと思います。
これからご家族の状況の変化がありますが、柔軟な感覚で住みこなしていかれることが楽しみです。
不動産探しから施工まで、リノベーションに関するあらゆるご相談に、幅広くお答えします。リノベーションコーディネーターが無料個別相談会を行っていますので、お気軽にご予約下さい。まずは、じっくりとお話ししてみませんか。
ご予約はこちらから